今回は、ウォレス・ワトルズ版の「引き寄せの法則」デス。
期待しておるぞよ。
ウォレス・ワトルズによる著作で、1910年に出版されています。
原題は、『THE SCIENCE OF GETTING RICH』となっています。
すでに著作権が切れているためか、原文はコチラでダウンロードできるようです。
「引き寄せの法則」に関わる著作の多くは、様々な願望の実現に向けて書かれていますが、本書は基本的に「金持ちになる」ということにフォーカスされた内容になっています。
なお以下の引用については、特別に記してある以外、『確実に金持ちになる「引き寄せの法則」』ウォレス・ワトルズ、川島和正監訳(三笠書房)によっています。
もくじ
「はじめに」の章について
本書で展開される説明の前提となっている「宇宙一元論」について語られている章です。
一元論というのは、一般的には、「世界のあらゆることは、ただ一つの実体、あるいは、ただ一つの原理から説明できる」とするような考え方のことです。
例えば、哲学書『エチカ』で知られるスピノザは、すべてのことを神の行いやその表れとして説明しようとしています。
本書の著者であるワトルズによる説明は、以下のようになっています。
これは、「1つは万物、万物は1つ」(すべてのものは、あるたった1つの物質からできている。物質界にある様々な元素は、ある1つの物質が形を変えただけのものである)という考え方です。P8
こうしたベースになる考え方は、「引き寄せの法則」の他の本でも、ある程度、共通しているものと考えてよいでしょう。
例えば、このような考えから、「すべては一つのものから生じたものであるから、どんなものでも自分に値しないものはなく、必ず手に入れられる」というような解釈がなされたりします。
また、「ある人とその人の望むものも結局は同じものであるため、望むものをイメージすれば同じ波動が発せられ、互いに引き寄せられる」などと言われることもあるようです。
ただし、ここで使われている「波動」というのは、物理上の具体的な現象を表現しているものではなく、単に感覚的な説明でしかありません。
なお、一元論と親和性の高い考えに、物理学の「超ひも理論(超弦理論)」があります。
超ひも理論とは、物質を構成する光子や電子などの粒子が、超ひもと呼ばれる一つの物質からできていると考えるものです。
ただし、これはあくまで仮説の段階の話であり、また、「引き寄せの法則」が想定するような「考えることが物質に影響を与えて現実化を促す」という点などは、主張も確認もされていないと考えてよいでしょう。
「あー、オマイは、そーゆーふーに信じてんのネ?」って感じだよなぁ。
まぁ、いちおう話を聞いていきましょう。
「第1の秘密 あなたには「金持ちになる権利」がある」の章について
ここでは、そもそも生命には向上するという目的があり、それは金持ちになることも含まれているということが主張されています。
「生きとし生けるものは繁栄を目指すので、人間もまた繁栄のために金持ちになろうとするのは当然だ」という話です。
すでに書いたとおり「引き寄せの法則」の説明では、「どんなに価値のあるものでも、あなたはその望むものに値する」ということを信じさせようとする傾向があります。
本書のテーマは「金持ちになること」ですから、まず最初の章で、「豊かであることは当然なのだ」というイメージを、読者の頭に刻みつけようとしているのでしょう。
さて、「金持ちになりたい」ということは、もっと単純に言えば、「パワーが欲しい」ということです。
そして実際、あらゆる生き物が弱くあるよりも強いことを望むのは、確かに普通のことと言えるでしょう。
本章には、「貪欲さを避ける」といった考えや「お金は汚い」というイメージを否定しようとする意味合いもあるのかもしれません。
マジかよ。
「第2の秘密 世の中には「確実に金持ちになる法則」がある」の章について
特別な能力も要らず、誰でも金持ちになれる確実な方法があるとされています。
そしてそれを、「完璧な科学」であるとまで主張しています。
けれども、「科学」と呼ぶのは、さすがに無理があるように思えます。
なぜ「科学」などと主張しだすかと言えば、そこには一神教的なバックボーンがあるからだと思われます。
西洋では、一定の法則が成り立つときには、そこに「神」の意志を見るということがなされてきました。
何らかの法則性が見出された場合に、その法則を作ったのは「神」だと考えるということです。
本書で展開されている内容は、富の法則として、そのような普遍性を備えていると著者は考えていて、だから「科学」なのだ、と言いたいのでしょう。
しかし現代では、「同じ条件でやれば、誰が何度試しても同じ結果になるもの」が「科学」と呼ばれると考えるのが普通です。
読み進めていけば分かりますが、本書の主張には、「一生懸命にやる」などというような主観的な話が多く登場しています。
そうした部分については、そもそも書かれているとおりに実践されているかどうかを客観的に判定することすら難しいと言えるでしょう。
つまりは、自称「科学」ということになろうかと思われますが、その具体的な内容については、次章以降で説明がなされていきます。
そんなもんがあるなら、教えてもらおうじゃねぇか。
さぁ教えろ。早く教えろ。
とりあえず、続きをご期待くだたい。
「第3の秘密 世の中には「無限のお金」がある」の章について
本章では、冒頭で出てきた「宇宙一元論」の考えが展開されています。
「すべての物質のもとになるのは、ただ一つの「形のない物質」であり、それは知性を持ち、繁栄を望んでいる」とされています。
しかし、なぜそうなのかについての説明はありません。
要するに、「ただ、そうなのだと信じなさい」ということを言っているようです。
本書で展開されている「宇宙一元論」の元になっているのは、いわゆるニューソートの思想と思われます。
ニューソートというのは、すべてが一つのものから生まれるとし、それを神と考えるようなもので、キリスト教から生まれた一種の「信仰」です。
つまりニューソートでは、神を何かを考えたり決めたりするような人格のようなものとは考えないで、人間の考えを反映する根源的な物質と捉えるわけです。
ここで展開されている内容についても、ニューソートの流れを受け、一種の信仰を前提としているようです。
ニューソートについては、コチラに関連図書のレビュー記事があります。
まーた、ニューソート。
「第4の秘密 金持ちになるための「基本原則」」の章について
万物はただ一つの物質から作られているという「宇宙一元論」に基いて、願望を現実化する方法が書かれています。
「すべてのものの元になっているのは、「形のない物質」であり、それは思考するのだ」とされています。
同時に、この「形のない物質」は人間の思考を受け取って、物質化してくれると主張されています。
現実化の順序としては、①「あまねく存在している「形のない物質」に対して人間から考えを伝える」と、②「「形のない物質」もその考えを抱く」ようになり、③「現実化する」という流れのようです。
もちろん、これはまったく想像であって、正しいと思うかどうかは、根拠となる宇宙一元論を信じるかどうかに掛かっています。
そして、本書は「それを信じなさい」と主張しており、そのうえ「無条件で信じよ」と言っているわけです。
けれども、当然のことながら、何かを信じるということは、「信じよう」と思ってするようなことではないため、その点はさすがに無理があると言わざるをえません。
シンジラレナイわぁ。
ええ。
「第5の秘密 金持ちになるための「考え方」」の章について
誰でもが金持ちになり、繁栄することは「神」の意志だというのが本章の主張です。
人間が能力などを拡大させ、繁栄していこうとする力に支えられている存在だというのは、間違いがない点でしょう。
つまり、ニーチェが言うところの「力への意志」です。
これについては、「人間が遺伝や進化によって受け継いできたもの」という考え方から見ると分かりやすいように思います。
まず、確認すべきこととして、次のようなことがあります。
- 人間は、自らの能力を拡大させようとする衝動を持っている。
- なぜなら、それを持っているものだけが、生き延びてきたから。
- 同時に、他の人間のためになることをしたいという衝動も持っている。
- 理由は2と同様。
人間が自分の能力を拡大させ、かつ周囲の人間と協力をして、いままで生き延びてきたということは紛れもない事実です。
ですから例外あるとは言え、基本的には、繁栄や協力に喜びを感じる性質を持った個体が現に生きている訳です。
こう考えれば、能力を拡大させ、他の人間と協力しようと意図するときに、もっとも大きな力が発揮されると考えるのも、おかしな話ではないと思われます。
著者は「神」の概念を持ちだしていますが、以上のように進化や遺伝の結果として見れば、拡大が運命づけられていることも、競争を志向すべきでないことも、それなりに説明がつきます。
つまり、ここで主張されている内容は、進化論的な見方が一般的でなかった頃の世界観に思えるということです。
的な話?
逆に言えば、そんな感じで捉え直さないと、そのまま飲み込むことなんて、ナカナカできない感じの主張ですわナ。
「第6の秘密 「「無限のお金」が生み出される仕組み」の章について
ここでは、すべての人にもらった以上のものを与え、繁栄をイメージすることが重要だと主張されています。
本書が前提としているのは「すべては一つの物質から成っている」という考えです。
ですから、それぞれの人間の中にも「形のない物質」、すなわち「神」がいることになります。
そこから、「繁栄するのは「神」の意志である」という話が展開されているわけです。
この点についてもまた、前章でも書いたような進化論的な解釈を加えることができます。
つまり、「繁栄を望むのは、遺伝子にそう書かれているからであり、なぜそのように書かれているかと言えば、繁栄を望む個体こそが生き延びてきたからだ」ということになります。
また、「互いに繁栄する」というイメージやそこから生まれた行動は、周囲の人間の中にも同じものを呼び起こすため、相互作用によって成功が加速していくという動きが期待できるように思われます。
人に与えるようにすると、自分も人から与えられてもおかしくないという風に、自然と思えるようになるというところもありそうです。
つまり、「自分は人から親切にされるほどの人間ではない」というような無意識のブレーキを外すということです。
「まず人に与えよ」ってヤツ。
「第7の秘密 お金を引き寄せる「感謝の法則」」の章について
感謝することの重要性は、多くの「引き寄せの法則」関連書籍で説かれるところですが、本書でも主張されています。
感謝をすると、「多くを受け取っている、豊かだ」という思いが作られ、それが「形のない物質」すなわち「神」に伝わり、結果として豊かさがもたらされる、ということのようです。
本書の主張ではそうなりますが、当サイトでは「引き寄せの法則」を無意識を活用する方法と考え、それを通して成功を勝ち取ることを目指すのだと解釈しています。
その観点からは、「豊かさをイメージすれば無意識に刷り込みが行われ、その状態を当然のことと見なして、目標へ至る道を脳が自動的に探し始める」という流れと捉えることができます。
いずれにしても、本章のポイントは、文章内で使われている「調和」という言葉で表現されているようです。
大体は、すでに多くのことがうまくいっているという事実に意識を向けると、世界と自分との調和を感じることができます。
そういう気持ちでいると、感謝が自然とできるようになる、という話です。
何がそんなにイイんだ?
「第8の秘密 お金を引き寄せる「イメージ・決意・信念の法則」」の章について
いわゆる、ビジュアライゼーションの重要性と、そのやり方について書かれています。
全体としては、「ビジュアライゼーションと、決意・信念がもたらすプラスの感情が願望実現への鍵だ」という主張と解釈できます。
当研究所の立場から見れば、ビジュアライゼーションについてもまた、無意識への働きかけと解釈することができます。
無意識は感情が生まれる場所ですから、無意識への情報の刷り込みを行うには感情が重要です。
この点についても、当サイトの考えは、この著作の内容と合致します。
いずれにせよ、「このことが実現する!」という信念の形成がポイントで、そのためには願望が実現したときのプラスの感情を呼び覚ましつつ、成功したときのイメージに親しむことが重要だということになるでしょう。
ただし、イメージする内容の明確さが大事と主張されていますが、その点については議論のあるところです。
ヒックス夫妻版の「引き寄せの法則」でも主張されているとおり、イメージできないことによってマイナスの感情を抱いてしまうのならば、過度の明確化は避けるべきです。
つまり、「そんな細かい所までは分からないな。そんなことではダメなのかな」と思ってしまうほどまで詳細に考える必要はない」ということです。
「第9の秘密 お金を引き寄せる「意志の法則」」の章について
「何を見ようとするかという意志が、何より重要だ」という内容の章です。
「引き寄せの法則」が活用できるかどうかは、言ってみれば、何に意識を集中させるかに掛かっています。
もちろん感情の動きも重要ですが、どういう感情が生み出されるかは意識を向ける対象によりますから、やはり意識こそが重要だということになるわけです。
貧しさに目を向け、不快な思いを抱き続ければ、それが起こったり続いたりするという「現実化のプロセス」が動き始めてしまいます。
また、人に対して「ああして欲しい」「こうならないだろうか」と思うことは、「自分の力だけでは幸せになれない」ということを自分自身に言っているのと同じです。
逆に、自分の価値を信じることができれば、そのことが知らず知らずのうちに周囲に伝わり、無意識的な協力を引き出すことができるのです。
なお、著者であるワトルズは、本章でも一神教的な宇宙一元論に基づいて語っているわけですが、「無意識」という言葉を使っており、その点はとても深いところです。
つまり、「神」について語っていながら、「無意識」の効果であると感じているようにも見えるということです。
イヤなこと、ムカついたことを、延々と考えちゃうとか、スゲーあるワ。
よっ!さすが、引き寄せマスター!
「第10の秘密 お金を引き寄せる「創造の法則」」の章について
「競争ではなく創造が重要」という対比が出てきますが、これが具体的に何を意味するかについては語られていません。
一般的に解釈するとすれば、創意工夫によって生産性を上げるようなことでしょうか。
働くというと、どうしても「汗水たらして一生懸命に」というイメージが強い人もいるだろうと思います。
けれども、懸命さが不可欠だという場合には、実際は創造性が足りていないということがしばしばです。
つまり、そうしたイメージの仕事の大半は、「多くの人がやっている通りにやる」「人に言われた通りにやる」という類いのものだということです。
それは取りも直さず、「競争のレベル」に留まることを意味しています。
一方、「こうあるべき」「こうでなければおかしい」というような考えを元に、根本的な改良を加えていくことが「創造のレベル」にあることだと考えることができます。
ただし、このような本章の指摘は、「引き寄せの法則」や「神」などには関係のない、単なる一般論だとも言えます。
新たな価値の創造は、どこの意識を向けるかってコトから生まれるって話かしらネ。
そーデス、そーゆー感じデス。
「第11の秘密 「確実に金持ちになる法則」を実践する方法」の章について
思考だけでなく、行動も大事という説明がなされている章です。
少々意地悪く言うとすれば、これまで言われたとおり、「良いイメージを持って全力で働けば、たしかに金持ちになる確率は上がるだろう」という感じはします。
また、「金持ちになれるほどの人物であるならば、日常的な業務などは楽々とこなせるのでなければおかしい」というようにも考えられます。
本章では「いまの仕事に全力を注げ」というアドバイスが書かれているのですが、こうした話などは単なる一般的なアドバイスにすぎない、というようにも言えそうです。
実際のところ重要なのは、「そもそも全力を注ぐ気になるかどうか」という点ではないでしょうか。
そういう意味では、「全力を注ごう」とわざわざ決めなければならない時点で、前段としてなされているべきマインドセットがうまくいっていない状態だとも言えそうです。
いずれにせよ、本章で展開されているような「思っているだけでは成功できない」という主張は、「引き寄せの法則」への批判としてよく言われるものです。
けれども、そもそも行動が引き起こされないというのは、「引き寄せの法則」がうまく利用できていないことの証拠そのものです。
逆に言うなら、「引き寄せの法則」を正しく使えているのなら自然とタイミングを捉えて行動をしてしまう、ということになります。
実際、ヒックス夫妻版の「引き寄せの法則」では、行動ではなく思考こそが重要だと何度も主張されています。
当サイトも、本当に注意しなければならないのは、中途半端な行動の方だと考えます。
なぜならば、懸命に行動することで「自分は先に進めている」と勘違いすることが少なくないからです。
そしていつしか、まったく目標に近づいていなくても、努力することで自分を納得させようとする場合が多いからです。
おそらく、著者が重要としている「全力を注ごうと決める」という話のように、意識で問題を解決をしようとするのは、「引き寄せの法則」の範疇の話ではありません。
じゃあ、考えてさえいればイイのか?
カンタンに言うと、ピンと来る前にアクセクしてもムダだったり逆効果な場合がほとんどだ、って感じの話です。
「第12の秘密 効率的に「確実に金持ちになる方法」を実践する方法」の章について
重要なのは、仕事をいかに効率的に行うかであるとの主張がなされている章です。
前々章で、「競争ではなく創造」とするときの「創造」とは、例えば「生産性を高めるようなこと」かと書きました。
本章の「効率的であることが重要」とする本章の内容から、それは正しかったようにも思われます。
ただし、続いてなされている「効率を上げるためには、行動に力を注ぐだけで良い」とする主張には疑問を感じざるをえません。
その主張の前には、「神はいつでも、あなたのために働いてくれます」とあることから、この部分は単なる信仰告白にすぎないようです。
「力を注ぎさえすれば、神が良いようにしてくれる」というのでは、納得するのは、一神教的な世界観を信じている人間だけでしょう。
そもそも「力を注ぐ」というのが、かなり曖昧な表現です。
おそらくは、「万物の元であり、神である「思考する物質」が、本来的に繁栄を求めているのだから、自ずと効率的になるのだ」ということを言っているのだと思われます。
けれども、人はしばしば、一生懸命に非効率な仕事をしてしまいます。
なぜなら、人間は本来的に危険を避ける傾向が強く、現状を維持しようとする力は強烈だからです。
つまり、「新しいことをして失敗したり怒られたりすることは嫌だと感じて、いまのままの仕事を続けようとする」ということです。
ただ、一生懸命に非生産的なことをし続けると、どこかで完全に嫌気が差して生産的になるように頭を働かせ始める、ということはあるかもしれません。
まぁ、これは神を信じている人の多くに言えるコトでもあるケドな。
「第13の秘密 自分の好きな仕事で金持ちになる方法」の章について
実際にどういう仕事にどうやって携わるかにおいてのアドバイスが書かれた章となっています。
能力を「正しく」生かすことが重要とされていますが、何をもって正しいと見るのかは、残念ながら不明です。
本章で語られていることは、全体として、一般的なアドバイスにすぎないように思えます。
また、「できないことは願望がわくことすらないから、やりたいことはできる」ということも書かれていますが、これはかなり乱暴な理屈です。
実際には、社会的な価値に引きずられて、本当にやりたいわけではない願望に振り回されることもあるからです。
例えば、文学賞を獲りたい小説家志望の人は、ただ多くの人に認められている分かりやすい栄誉が欲しいだけで、本当に小説家になりたい訳ではないのかもしれません。
要するに、「やりたい」ということにも、本物と偽物があるということです。
偽物の願望には、すでに書いたように名声を求めているだけの場合もあれば、他にも、現実から逃げたいだけの場合もあるでしょう。
あるいは、そういうものは著者が言う本当の「やりたい」ではないから、最初から除外されているということなのかもしれません。
ただし、その後に主張されている「急ぐ必要はない」という主張には、同意ができます。
なぜなら、きちんとしたマインドセットができてしまえば、さほど思いきらなくとも、自然と「そちらに進むのが当たり前」な心持ちになるからです。
急ぐということは、「自分が目標にたどり着けないというイメージに侵されている」ということですから、「引き寄せの法則」に従って考えれば、目標の不達成が実現されることになってしまうわけです。
「ちゃんとやらなきゃダメだと思ってます」とかいう類いの意味なし発言で、政治家の答弁みたいダゾ。
多くの人に教えられるようなことを言っているワケで、ザックリになりがちなのはしゃーないとしても、ちょっとトホホな内容デスな。
「第14の秘密 人を惹き付けて金持ちになる方法」の章について
繁栄のイメージをはっきりと抱いていれば、周囲に伝わっていき、それが物事をうまくいかせるといった内容の章です。
この章は、「引き寄せの法則」を無意識的な心の効果と見る当研究所の主張と、近い考えの内容となっています。
人を動かすには、誰の心にもある「繁栄したい」という気持ちに訴えかけよという教えがしめされています。
「引き寄せの法則」について当サイトでは、「気分が上がるイメージを抱けば自分の心を活性化させることができるし、なおかつ、相手にもそれが伝わって自ずとプラスの影響を与えてしまい、その結果も自分に返ってくる」というものだと解釈しています。
このような作用を使おうとする際には、できるだけ多くの人がプラスのイメージを持つものであることが、影響を与えやすいという意味では、有利と言えば有利です。
繁栄というのは、あらゆる生き物が持つ根本的な欲求です。
ですから、自分の中に十分に刻み込まれていれば、たくさんの協力者を引き寄せることが期待できるでしょう。
他にも、相手を支配したくなる誘惑に用心をせよ、ということが言われています。
実際、相手を支配しようとすると、そのことが無意識的に相手に伝わり反発を受けるということが起きがちです。
また、人を支配しようとすれば、自分を支配しようと画策する人を引き寄せることにも繋がります。
もっと広く言うなら、相手の自由を侵害しようとする意図はすべて、自分自身への障害を招くことになるわけです。
言わなくてもっつーか、むしろ言わない方がイイかもしれませんネ。
意識的に表現されると、無意識的な訴えかけのジャマになるかもしれないので。ために。
「第15の秘密 どんな状況であっても金持ちになる方法」の章について
残る2章を前に、全体をまとめたような内容になっています。
「確実な方法」には間違いがない、ということを主張するような内容になっています。
ここでは「引き寄せの法則」を「数学的真理」としていますが、おそらく「人間的真理」と言った方が当たっているでしょう。
しかも、極めて人間的な真理です。
言ってみれば人間というのは、自らのイメージに支配されている生き物です。
自分以外の人間もそれは同じであって、だからそこに働きかけることに大きな力があるわけです。
例えば、一般的に言って親が商売をやっている家の子供は、自分でお金を稼ぐことに対する心理的障壁は低いでしょう。
少なくとも、サラリーマンの家の子よりは、です。
なぜなら、自分でお金を稼ぐことを「当たり前」だと感じているからです。
逆に言うなら、何を「当然」と思うかで人生が大きく左右される、ということになります。
本書で語られている「確実な方法」とは、その「当然」を作り変えるための手順だとも言えそうです。
「第16の秘密 必ず注意しておくべきポイント」の章について
「確実な方法」を実践する際の注意事項が列挙されている章です。
しかし、「引き寄せの法則」の立場からすると、そのこと自体が微妙な企てと言わざるを得ません。
なぜかと言えば、「無意識は否定形を理解しない」というのが、多くの「引き寄せの法則」の本に書かれている基本的な教えだからです。
残念ながら、本章の注意事項の多くが否定形で書かれています。
具体的には、「富が有限だと思ってはならない」、「心配をしてはならない」、「失望してはならない」というような話です。
けれども、例えば「失望してはならない」とあまり考え過ぎると、「失望」を引き寄せてしまうとするのが、他ならぬ「引き寄せの法則」の考え方です。
本章で指摘されている内容を何度もイメージする人は少ないかとは思いますが、メタレベルの注意事項として、いちおう記しておきます。
どちらかと言えば、「失望してはならない」と注意するより、「失望を覚えるようでは、まだ方法の実践が足りない」と諭すべきかとも思われます。
「第17の秘密 「確実に金持ちになる法則」のまとめ」の章について
全体のまとめの章です。
万物は「思考する物質」により構成され、人間が思考を投影すれば、その物質もまた思考することで現実化がなされること、競争から想像のレベルに自らを引き上げるのが重要であることなどが、再度、主張されています。
イメージの鮮明さ、決意と信念の固さ、感謝の深さが、どれだけ多くの結果を受け取れるかのポイントだされていますので、その点について検討してみましょう。
イメージを鮮明にしようとするのを重視するあまり、詳しいところがイメージできないことでマイナスの感情になるようでは本末転倒だという点については、すでに書いたとおりです。
決意と信念の固さについては、ある瞬間に強く思うような話ではなく、繰り返しによって鍛えていくというイメージで捉える方が良いだろうと思います。
つまり、この著書でも主張され、例えばアトキンソンの著書においてもそういう傾向がありますが、必ずしも「強く念ずることが重要」というわけではないという話です。
「引き寄せの法則」はおそらく心掛けの問題ではなく、ものの見方についての訓練であり、それによって脳の回路を組み換えていく、というような話だと思われます。
つまり、意識を何に向けるかを少しずつ脳を変えていき、積極的、肯定的な心の態度を得て、能力を底上げするような目論見だということです。
そして、その際の原動力になるのが、感謝の念であると考えることができます。
その意味では、瞬間的に抱く固い決意などには、さほど大きな意味はありません。
その辺りが、すでに信仰を得て、そこから語っているワトルズにはあまり理解されていないように感じられます。
でも、信念の固さとか感謝の深さって、どっちかと言えば、原因じゃなくて結果なんだよなぁ。
解題
各章で、それなりに考察を加えてきましたが、少し補足をしておきます。
「引き寄せの法則」についてですが、原文の英語での一般的な表記は、「The law of attraction」となります。
しかし、本書の原文を当たっても、「The law of attraction」はおろか、「attraction」という言葉すら出てきません。
実際、著者が本書に記しているのは、直接的には、「金持ちになるための科学(The science of getting rich)」についてであって、「引き寄せの法則(The law of attraction)」についてではないのです。
「attract」という単語も、「人を惹きつける」という意味合いで数回ほど登場するだけです。
つまり、「引き寄せの法則」という言葉は、翻訳者が挿入したものだということになります。
例えば、本文中の「the law of wealth(富の法則)」を「引き寄せの法則」と言い換えたりなどしています。
このように、著者が「引き寄せの法則」を積極的に打ち出して著した本ではないという点については、いちおう指摘しておきたいと思います。
ただし、本書の内容は、いわゆる「引き寄せの法則」と呼ばれる思想の重要なポイントを含んでいます。
具体的には、以下のようなものです。
- イメージを感情とセットで何度も抱くことが重要。
- そうするとイメージしたものが現実化する。
- 感情の中でも感謝が特に強力。
- 受け取れるものはすべての人に行き渡るほど豊かにある。
そのため解釈として、「これは「引き寄せの法則」についての本である」という点には、同意できます。
それどころか、「イメージの刷り込みが十分に行われると、周囲の人間から無意識的な協力が得られるようになる」と主張しているところなどは、「引き寄せの法則」についての深い理解から得られた考えだと言えるでしょう。
以上のことから、「引き寄せの法則」がどういうものなのかを知りたくて、かつ、お金を稼ぐことにも興味がある方には、それなりにオススメできる本です。
それなりにと書いたのは、それでもやはり「宇宙一元論」を基礎としていて、その考え自体がかなり受け入れにくい内容になっているからです。
ただし、「宇宙一元論」については、「引き寄せの法則」の元になっているともいえるニューソートの基本的な考え方ですから、たとえ誰が書いたものであっても、多少の影響は感じられるだろうとも思います。
【商品リンク】
⇒ amazon
⇒ 楽天
⇒ ヤフーショッピング
会員になったら、限定記事が読めちゃうYO!