「引き寄せの法則」研究所

書評・レビュー:『実践 引き寄せの法則 感情に従って“幸せの川”を下ろう』エスター・ヒックス、ジェリー・ヒックス、吉田 利子訳(SBクリエイティブ)

本書は、ジェリー・ヒックス、エスター・ヒックス夫妻によるもので、2008年の出版となっています。

題名のとおり、実践的な内容で、「引き寄せの法則」によって願いを叶えるためにはどうすべきか、具体的な悩み、質問に対して答える形式で説明を行うという内容になっています。。

本書では、ヒックス夫妻が説明する様々なメソッドの中の一つである、感情を少しずつ良いほうへ移行させる方法が語られています。

Part1の部分では、一般の人にはかなり突飛と思えるだろう思想が展開されています。

いわゆる、スピリチュアル系の考え方です。

それは、妻であるエスター・ヒックスに憑依した存在(エイブラハム)が語る内容として紹介されています。

この部分については、少なくない人が受け入れがたいものと思うことでしょう。

しかし、Part2以降で説明される、感情をコントロールする方法については、非常に役に立ち、また具体的で分かりやすいものだと思います。

まずは、part1で展開される不可思議な思想から見ていくことにしましょう。

なお、以下の引用については、特別に記してある以外、『実践 引き寄せの法則 感情に従って“幸せの川”を下ろう』エスター・ヒックス、ジェリー・ヒックス、吉田 利子訳(SBクリエイティブ、2008)によっています。

 

「Part1 引き寄せをガイドする“感情の驚くべき力”」について

ヒックス夫妻版の「引き寄せの法則」は、「エイブラハム」と呼ばれるエスター・ヒックスに憑依した存在が語りかける内容に基づいています。

つまり、日本で言えば東北地方の「イタコ」のような状態で、エスター・ヒックスがその思想を語っているわけです。

そのため本書は、このエイブラハムという存在が、読者に対して語りかけるような内容となっています。

「第一章 地球という星へようこそ」について

この章では、人間の存在というのは単に誕生で始まり死亡で終わるようなものではない、とする教えから始まっています。

いま生きているこの生が全体なのではなくて、それ以上に広がるものであり、「あなた方であるすべて」(P31)を認識することが大事だと説かれています。

そのような認識によって、初めて「喜びに満ちて永遠に拡大し続ける生命を生きることができる」(P31)とされています。

また、この世界に生まれ出ようとしたときには、新しいこの世界という環境が自由で無限であることを知っていたし、またそのためにワクワクした気持ちでいたはずだ、と主張しています。

このような考え方は、いわゆる「輪廻」の思想の一種と見ることができます。

輪廻の思想は、現世以外の生を前提としますから、過去生や来世などによって、現世を意味づけることを可能にするものです。

このような作用は、天国や地獄を想定するような思想でも同じですが、輪廻は限りない繰り返しを想定していますから、現世の相対化はより強力に働くと言えるでしょう。

逆に、生まれ変わりも天国も地獄もないと考えると、現世を意味づけることは困難になります。

自分の一回の生がすべてであり、全体であるから、他のものと関係することができなくなり、意味を見出すことができなくなるからです。

人間の心は、そのような虚無性には耐え難さを感じます。

そのため、スピリチュアルな考え方というのは、必然であるとさえ言えるわけです。

 

「第二章 全体像を思い出す」について

この世界を越えた見えない領域があって、それは「場所ではない場所」(P34)と呼ばれています。

そして、この世界に自分自身がいるのと同時に、「場所ではない場所」にも自分自身が存在しているのだと主張しています。

また、「見えない世界の自分」を理解するためには、感情と言うものがカギになるとされています。

ヒックス夫妻の思想に登場する独特な用語として、「内なる存在」と言うものがあります。

これは、彼らが主張しているような「見えない世界」に存在している我々自身のことを意味しています。

また、この「内なる存在」は、「ソースエネルギー」の一部であるとされています。

「ソースエネルギー」とは、一般的に用いられている言葉で表現すると「神」ということになります。

つまり、見えない世界の中に「神」たる「ソースエネルギー」が存在して、その一部である「内なる存在」が我々の源であるということになります。

ヒックス夫妻の説明によれば、「内なる存在」が、物質世界に働きかけることで、我々の存在が実現しているということになるそうです。

そのため、彼らは人間を「神」の延長だと主張をしています。

以上のような考え方は、すべての原因たるただ一つの物質を「神」と捉える、ニューソートの思想とほぼ同じだと言っていいでしょう。

結局のところ、他の様々な著者が表現している者と同様、ヒックス夫妻版の「引き寄せの法則」にもまた、その源流としてニューソートがあるのだということが分かります。

ニューソートについての書籍については、コチラにレビューがありますので、適宜、ご覧ください。

 

「第三章 宇宙はあなたがたを通じて拡大している」について

ここでは、我々が五感を通じて様々なものを認識することを通じて、そこから何かを愛し、あるいは求めることによって新たな現実を生み出しているのであり、また、そのような働きによって宇宙が拡大していっているのだという主張がなされています。

そのため、自分のために何かを認識し求めるということをが肯定されることになり、いわゆる自己中心性は否定されるべきものではないと説かれています。

また人間は、この世界の中で様々なものを認識することを通じて何かを望んだり望まなかったりしますが、そのようにして何かに意識を集中させるような心の動きによって、現実を創造しているのだとされています。

このような考え方のため、まず思考が先に存在して、それによって物質的な現実が作られるのだというような説明がなされています。

ここで、また独特の表現が登場しており、それは「波動」と呼ばれるものです。

先ほど、思考が現実の元になっていると説明しましたが、その原因たる思考のことを「波動としての概念」(P42)と表現しています。

つまり、この「波動」というのは、我々の頭の中にある思考が現実に影響を与える際に媒介となるもの、というような意味合いであるようです。

全体の流れとしては、まず思考があり、それが特定の波動を持っていて、その波動の部分が物質世界に影響することで、思考が現実化する、とされているわけです。

先述のニューソートの思想では、病気が治癒する際には、エネルギーとしての「神」が体に入ってきて、その影響で治癒するとされており、このような働きを「心的流入」と呼んでいます。

ヒックス夫妻版の「引き寄せの法則」で展開されている、イメージが持つ波動の力の影響によって現実が形作られるという考えは、このニューソートの考えと類似していることが分かるものと思います。

 

「第四章 あなたは波動として存在している」について

この章でも、ヒックス夫妻の独特な表現が登場しています。

その一つは、「願望のロケット」と呼ばれるものです。

これは現実に様々な経験をする中で何かを求めたり避けたりする心の動きからイメージが描かれることで、波動がさまざまに外に向けて発せられるような状況を表現した言葉です。

少しわかりづらいかもしれません。

しかし、この概念については、以下のように説明できるでしょう。

生きていれば何かを欲しいと思ったり嫌だと思ったりすることになります。

そのようなときには様々なものをイメージしているわけですから、ヒックス夫妻の解釈によれば、そのイメージに宿った波動が発せられることになります。

このように求めたり避けようとしたりすることで常に生み出し続けられている波動が、「願望のロケット」であり、これが現実化の源になると主張しているわけです。

もう一つの独特な表現としては「波動の預託口座」と呼ばれるものがあります。

これは、様々な願望が生み出す波動が現実化の原動力になることから、色々なことをイメージすることで、その力が蓄えられているさまを表現しているものと解釈することができます。

「イメージしたものが、現実になる」というのが、「引き寄せの法則」の基本的な考え方です。

そこでは、イメージによって波動が発せられて、その力が貯まっていき、それがある程度以上になるとき、現実の世界の中に願望が実現されるということになります。

このようにして蓄えられていくイメージによる力がある場所こそが、ヒックス夫妻が「波動の預託口座」と呼んでいるものです。

好きなものであれ嫌いなものであれ、そのことに意識を集中させて、特定の事柄をイメージすると、「願望のロケット」が打ち上げられることになります。

すると、イメージしたものから波動が発せられて、それが「願望の預託口座」に貯えられていきます。

そして、「願望の預託口座」が一杯になったところで、イメージしたものが現実になるという流れです。

注意すべき点は、ネガティブなことであっても、イメージをし続ければ波動の力が貯えられることによって、現実化してしまうと考えられる点です。

自分に不愉快なことをする人がいたとしても、その人の不愉快な言動のことを考え続ければ、新たな嫌な言動を引き寄せてしまうということになります。

イメージすべきなのは、ネガティブなことではなく、ポジティブなことにすべきという考え方が、ここから引き出されることになるわけです。

なお、この「波動」による現実化という説明の仕方は、感覚的で曖昧なものであって、何か具体的で解明されている現象を表現しているものではありません。

要するに、スピリチュアルな表現でしかないということです。

当研究所では、「引き寄せの法則」による現実化の作用を、人間の無意識の力によるものと捉えています。 そのような解釈のもとに「引き寄せの法則」をより現実的に解釈した記事については、コチラを参照いただければと思います。

 

「第五章 感情は絶対的な指標」について

何らかの願望を抱くと「見えない世界の部分」(P49)が大きくなり、それにマッチしたイメージを描いていると気分が良くなり、その逆だと不快な気分になるとされています。

この点については、ヒックス夫妻の諸々の主張を認めるかどうかにかかわらず、自分が「こうなって欲しい」と思うものを思い描けば快い気持ちになるでしょうし、「そんなことは無理だ」と思えば嫌な気持ちになることは間違いのない話でしょう。

本書では、このような感情の働きを願望実現のために役立てるべし、ということを教えているわけです。

全体の流れとしては、願望を描く⇒「内なる存在」が拡大する⇒それ(目指すべき自分)にマッチしたイメージを抱く⇒よい気分になる⇒そのことを続ける⇒願望が実現する、ということになります。

この地上に生まれた目的である美しい人生を送ろうと思うなら、人生がそうなるようにし向けた自分に自分自身を合わせる方法を見つけなければいけない。P50

ここで重要なのは、具体的な行動ではなく「精神的なプロセス」(P52)の方だということも指摘されています。

「精神的なプロセス」とはつまり、自分としてはどうなりたいのかということに意識を集中させるということです。

このようにして、「波動の調整」(P53)をすることで願望を引き寄せなさいというのが、ヒックス夫妻の教えなのです。

以上の説明について、少し考察を加えてみましょう。

何らかの願望を抱くときには、大抵は、何かしらのきっかけがあるものです。

それは単に財布にお金がなくて、「もっとお金が欲しい」と思うことであるかもしれません。

あるいは、自分以外の誰かが良い成績を取ったり、昇進したりして、「自分もそうなりたい」と望むこともあるでしょう。

そんなとき人は往々にして、「でも、(現状のままの)自分では無理だ」と考えてしまうものです。

けれども、そう考えた瞬間の感情の動きを見てやれば、そうしたイメージを持つべきかどうかはすぐに分かります。

つまり、「自分では無理だ」と思えば、残念な気持ちになり、暗くネガティブな感情が心に起こるだろいうという話です。

簡単に言えば、何かを考えたときに嫌な気分がするということは、取りも直さず、「その考えをやめろ」と自分がメッセージを出していることを意味しています。

逆に、「自分にもチャンスがあるはずだ」「あの人と圧倒的な差があるわけではない」と思えば、いくらか気持ちが明るくなるかもしれません。

そのような考えは、気持ちを明るくさせ、そのことだけでも自分が持っている能力を上げる働きがあります。

ただし、「いつでも、何でも良いからポジティブなことを考えろ」という教えではないという点に注意してください。

無理矢理にポジティブになろうとすると、心は同意しないことがほとんどです。

つまり、良い気分になど、なりはしないということです。

まずもって、気分が良くなるということが重要なのであって、「引き寄せの法則」は単なるポジティブ思考ではないという点は、きちんと理解しておく必要があります。

 

「第六章 波動が調整できれば気持ちが楽になる」について

人が自分のために何かをするように仕向けるのではなく、ただ自分自身が、自分の気持ちが良くなる考えを採用するようにしなさいとの教えが説かれています。

多くの場合、人は誰かに何かをやってもらうことで幸せになろうとします。

けれども、このような考え方は、「私は自分一人の力では幸せにはなれない無力な存在だ」と自分に言い聞かせることと同じなのです。

目指すべきは、誰か何をしようと、ただ自分だけは自分を良い気分にさせることができるというような心の状態です。

ここで、ヒックス夫妻の独特の表現が、また登場します。

それは、「流れのなかのカヌー」(P57)と呼ばれるものです。

自分自身を、川に浮かべたカヌーにオールを持って乗っている人とイメージしてください。

多くの人は、上流に良いものがあると思い込み、それが義務や責任だと言わんばかりに、必死になってオールを漕ぎます。

けれども上流に望むものなどなく、オールを手放し流れに乗りさえすれば、素晴らしい場所に行き着くことができるのだと、ヒックス夫妻は説いています。

これは、「自分が願望を実現するのにふさわしい人間であることを信じろ」というメッセージなのだと解釈することができます。

望みを実現するのが当たり前なのであれば、必死になって努力などする必要はないというようにも考えられます。

自分にとって最適なペースとタイミングで進めば自ずと夢が実現するというのが、「ふさわしい人間」というものだからです。

恐らく落とし穴になるのは、必死になって努力することが目的化してしまいやすいという点だと言えるでしょう。

多くの人は、実現したい願望のために努力をしますが、そうするうちに、単に努力をしていることをもって「自分はきちんとやれている」と考えるようになりがちです。

日々努力を重ね、クタクタになってベッドに倒れ込むことでしか自分を許せなく、そのうえ願望の実現に本当に近づけているかは不明な状態であったりすることになります。

また、「たゆまぬ努力によってしか夢を実現できない」と思えば、願望の実現を必要以上に困難なものと自分に言い聞かせることにもなってしまいます。

これらの心理的な働きが障壁となって、願望の実現を阻んでいるところがあるということを寓話的に表現していると解釈できるわけです。

また、「あなたの「内なる存在」は「既にそうなって」いる」(P59)とも書かれています。

何かを望んだとき、どうなりたいかというイメージである「内なる存在」は、すでにそうなっており、だから、意識を望ましい状態に向ければ、良い気分になるのだとされているわけです。

そして、意識するものをコントロールし続けて、快い気持ちのままですごせば願望は実現する、ということになるわけです。

「引き寄せの法則」についてはヒックス夫妻だけでなく、様々な人が説明をしています。

「すでに願望が実現されたものとしてイメージせよ」という考え方については、多くの他の著者も同様の説明を行っているところです。

当研究所では、それを無意識への刷り込みとして理解しています。(興味のある方は、コチラをご覧ください。)

いずれにせよ、ここで語られていることは、願望実現のための考え方を示したものであることは確かです。

いま我々が暮らしている物質世界以外のものを想定することは、何やら怪しげな話だと感じる人もいるかもしれません。

けれども、ただ願望実現のためのメソッドとして、そのような考え方を採用するというのであれば、何も完全にオカルティックな話だということにもならないように思えます。

つまり、一種の方便であると捉えることもできる、という話です。

 

「第七章 あなたと「拡大したあなた」の波動のギャップ」について

ここでは、感情が意味するものについての説明がなされています。

人間は、何かをイメージするときに、良い気分になったり嫌な気分になったりします。

そのようなプラス、あるいはマイナスの感情は、願望と信念のギャップを表現しているのだと、ヒックス夫妻は説明します。

例えば、「お金持ちになりたい」という願望があったとしましょう。

願望がそのようなものであっても、自分の信念の方が「無理だ」というものであれば、暗い気持ちになりマイナスの感情が生み出されます。

逆に、「当然そうなれる」という信念があれば、明るい気持ちのプラスの感情が生じることになるわけです。

けれども、「無理だ」という信念から「当然そうなれる」という信念の方に、一足飛びに移るというのは難しいだろう、というような説明もなされています。

そして、またそうする必要もないのだから、すこしずつ良い気分に移っていくようにすることが大切だというように説いています。

このような感情の移動を具体的にどのようにするかについては、Part2の部分で説明されていますので、後で見ていくことにしましょう。

また、「上流にはあなたが望むものは何もない」(P65)とされており、だから、自然の流れにまかせるようにとの説明がなされています。

このような考え方は、「引き寄せの法則」の元となるニューソートの影響であると見ることができます。

「身を委ねさえすれば、良いところに導いてもらえる」との考えは、まぎれもなく一個の「信仰」です。

ニューソートはキリスト教の一派から生まれたものですから、「神」に対する「信仰」がその根幹にあります。

ヒックス夫妻版の「引き寄せの法則」にもまた、このような「信仰」の影響が見られるということです。

ここで重要なのは、「神」を信じていようといまいと「導きがある」という考えは、人間の心に快さを呼び覚ますものだと言える点です。

人知を超えたものに導かれながら存在している人間というイメージは、当の人間の心を安らかにさせるものであり、ただそれだけで能力を伸長するものであると言えます。

つまり、具体的な、どの宗教の「神」を信じるかなどを問題にしなくても、ただ何らかの力が人間を導き支えていると捉えること自体が、少なからぬ良い効果を生み出すだろうという話です。

 

「第八章 人生の流れは自然のサイクル」について

自分という存在は永遠に生き、終わりのない拡大をするものであって、その流れの中で願望が実現されるのだと捉えよと説かれています。

このような考え方もまた、先ほど説明したのと同じような効果を持つものと考えることができます。

つまり、永遠の存在であるという人間の捉え方は、多くの人間の能力を引き伸ばしてくれるだろうということです。

おそらく多くの人間は、人間がただ一回の生を生き、それだけの存在であるということを完全に受け入れることが難しいのではないでしょうか。

その虚無を受け入れられないということがまずもってあり、そのために宗教が生み出されたと考えるのは自然なように思われます。

続いて、ヒックス夫妻は「ただオールを手放せばいい」(P69)と説明します。

要するに、ジタバタするからうまくいかないのであって、流れに身を委ねれば自ずと望むものは実現されるという話です。

これは端的に言って、信仰告白以外の何ものでもありません。

またこれは、とにかくリラックスしていなさい、という教えでもあります。

当研究所では、「引き寄せの法則」を人間の無意識の働きによる効果と考えますが、リラックス状態が無意識による問題解決の条件であることを、ここでは指摘しておきたいと思います。

 

「第九章 「引き寄せの法則」に練習はいらない」について

ここでは、この宇宙にある強力な「三つの法則」が説明されています。

第一の法則は、「それ自身に似たものを引き寄せる」(P73)という「引き寄せの法則」であり、第二の法則は「意識を集中させたものが現実になる」という「意図的な創造の法則」です。

そして、最重要とされる第三の法則は、これまで説明してきた「流れに身を委ねる」という「許容・可能にする法則」です。

ヒックス夫妻の説明では、「「許容・可能にする法則」をマスターするためにあなたがたはこの時空の世界に生まれた」(P71)のだそうです。

意図的に経験を想像して本来の目的である楽しい人生を送るには、もっとずっと簡単な方法がある。それは「許容・可能にする術」を理解し、応用することだ。これは、自分が欲するもののほうへ意識的に穏やかに思考を方向づける方法だ。P74

「許容・可能にする法則」と「許容・可能にする術」という、似たような二つの表現が登場しています。

「許容・可能にする術」というのは引用にもあるとおり、「自分が欲するもののほうへ意識的に穏やかに思考を方向づける方法」であり、それによって願望が実現するということが「許容・可能にする法則」と考えることができます。

自分の中にある願望を見出したり、その願望を味わって楽しく思ったり、自分はそれに相応しいと喜びを感じたりすることは、願望実現のために近づくことであり、カヌーのたとえを使えば「「川」の勢いをさらに増す」(P76)ことだと説明されています。

なお、「許容・可能にする術」については、別の著作である『引き寄せの法則 エイブラハムとの対話』では、「許容し可能にする術」と少し表現が違っていますが、次のように説明されています。

第三の「許容し可能にする術」というのは、「わたしがありのままのわたしで、他者がありのままの他者であることを許容し、可能にしよう」ということだ。P58

本来的な意味合いは、こちらであると考えられ、このような考えを現実に適用するための具体的なメソッドが、本書で説明された「自分が欲するもののほうへ意識的に穏やかに思考を方向づける方法」(P74)だということになるのだと思われます。

ここで、「穏やかに」という言葉が使われていますが、なぜ一気にプラスの方へ思考の方向づけを行わないのかと言えば、そのような目論見には、現実に対する抵抗が含まれることになるからです。

もっとよい場所に急がなければならないと思うことで、あなたは「流れ」の力を、そのスピードや方向や約束を邪魔している。P75

これはつまり、自分の力を信じていないということを意味し、だからその態度はチャンスを見逃させ、自らの力を奪うものなのだということを知れ、ということなのでしょう。

 

「Part2 事例に学ぶ“感情の驚くべき力”」について

Part1では、ヒックス夫妻版の「引き寄せの法則」についての説明がなされましたが、Part2の部分では、個別具体的な悩みの相談に対して、どのように考え、どうやって「自分が欲するもののほうへ意識的に穏やかに思考を方向づける」(P74)べきなのかが説明されています。

事例は33個もあり、すべてについて書くことはしませんが、ここでは一つの事例についてだけ見てみることにしましょう。

「深刻な診断を下されました。あとどれだけたてば、解決策が見つかるでしょうか?」という問いに対して、次のように考え方を少しずつ変えていくべきことを示しています。

「これはとても恐ろしい診断だ」P84

「どうして自分がこんな病気になるんだ」P84

「こんな病気に負けるものか」P85

「診断を受けたおかげで、もっと健康を望むようになった」P86

「わたしはこれからも成長し、もっと多くを望むだろう」P86

「波動のレベルでは、わたしは最高に健康な状態にある」P86

「じたばたしなければならない理由はない」P86

「必ず健康になる」P86

はじめは気分が塞いでしまうような考えから、自分の境遇への怒りの段階をすぎ、次第に「いま確認できるプラスの面は何か」「自分が何を望むか」に考えをシフトしていることが分かると思います。

実際にはもっと細かい段階で考えが変わっていくさまが説明されていますので、興味のある方は、実際の書籍を確認してください。

また、「あとどれだけたてば良くなるか」や、自分より重篤な人を見て「ああはなりたくない」と思ったときに、どう考えるべきかについても説明されています。

いずれにせよ、ネガティブな気分になってしまうような「流れに逆らっている」(P88)考えを採用するのでなく、明るく、あるいはホッとできるような「流れに乗っている」(P88)考えを探すことが重要だとされているわけです。

いつ、どのようにして体調がよくなるかを知ろうとすれば、そんなことはわからないのだから、抵抗の波動が生じて体調の改善は妨げられる。要するに、今すぐに体調を改善することはできないが、気持ちを楽にして感情を前向きにすることはできる。それだけで十分なのだ!P91

逆に言えば、病気になってしまうと、「どうやればすぐに良くなるだろうか」という分かりもしない問いや、「このままどうなってしまうのだろうか」といった不安を、不必要に弄んでしまうことになりがちだということでしょう。

「病は気から」という言葉がありますが、このようなことは、ただの言い伝えなどではありません。

新たに薬を作るときには、薬理作用がないプラセボ(偽薬)と比較する実験をして、その効果を確認するというのは、よく知られたところです。

つまり、薬だと思ってただの砂糖を固めた錠剤などを飲むと、実際に効果がでてしまうということです。

飲み薬だけでなく、例えば、歩行に支障があるほど膝が悪い人に対し、手術をすると伝えながらただ膝をメスで開き、そのまま傷口を閉じるということをしたところ、問題なく歩けるようになったという事例があります。

つまり、「私は手術を受けた」という思いが、痛みを取り除き、病気を直したということになります。

また、医学的な効能が厳密に確認される最近までは、砂糖の錠剤や無菌水の注射といったようなプラセボによって非常に多くの治療が行われてきたのは、歴史的な事実だと言えるでしょう。

プラセボというと「偽薬」という訳語のイメージからか、「偽の効果」と捉える人が少なくないようです。

けれども、これは「人間の本来持っている治癒力が、何らかのきっかけによって薬と同等以上の効果を発揮する場合がある」ということを意味していると考えるべきでしょう。

そして、そのきっけかの大きな一つとして肯定的なイメージを抱くということがあって、逆に治癒力を抑制してしまうのが否定的な思いや感情であるわけです。

その意味では、「引き寄せの法則」が、それによって気分を良くした人の治癒力をアップさせるのは、当然の話であるとさえ言えます。

 

解題

本書は、ヒックス夫妻がもっとも重要としている「許容・可能にする術」をマスターするための一つの方法が書かれた本だと言えます。

そして、我々が具体的にやるべきこととして説明されているのは、「自分が欲するもののほうへ意識的に穏やかに思考を方向づける」(P74)ということです。

別の著作である『引き寄せの法則 エイブラハムとの対話』では、「許容・可能にする術」について、「この「法則」を理解して実際に適用すれば、すべてが思いどおりになる」(P204)とさえ言われています。

また同書では、「許容し可能にする術」を以下のように定義しています。

わたしはわたしであり、わたしはありのままの自分に喜びを感じて、楽しんでいる。あなたはあなたであり、たぶんわたしとは違うだろうが、それもそれでよろしい。P205

これは簡単に言うなら、「それぞれがありのままであることを認め、それでも自分が幸せであることが可能だということを理解しなさい」ということでしょう。

問題は、「そのことが心の底から分かり、また実践することができれば、どうして願望が実現するのか」という点です。

この点については、逆の状態を考えると、色々と分かってきます。

「許容・可能にする術」とは逆の立場とは、「人がありのままであることを許さない」というようなものになるでしょう。

これはつまり、人に文句を言い、現状を不満に思うというような心持ちであるわけです。

このような態度はつまり、マイナスの面に意識を集中するということです。

また、「イメージしたものが現実になる」というのが「引き寄せの法則」です。

結局のところ、「許容・可能にする術」とは逆の立場を取れば、自分にとってマイナスのことが引き寄せられることになります。

以上が、おおまかな説明になりますが、もっと現実的に、「引き寄せの法則」のようなスピリチュアルな説明を前提としない議論は、コチラに書いてありますので、興味のある方はご覧いただければと思います。

さて、本書がどのような人にオススメかを、最後に書いておきます。

ヒックス夫妻は「引き寄せの法則」の大家と言って良いでしょう。

しかし、その思想は、独特の考え方や用語が多く、理解しづらいところがあります。

その点、本書は人間関係やダイエットの悩みなど、日常的な悩みに答えるスタイルを取っていることから、かなりとっつきやすいものと言えるだろうと思います。

そのため、「引き寄せの法則」についてきちんとした内容を知りたい初心者の方に、オススメの本です。

掲載されている悩みは、病気になった、やせられない、整理整頓ができない、親が過干渉、子供がバカにする、家族にウソをつかれる、ペットが病気、息子がゲイだったなど、多岐に渡っています。

書店で興味のある相談内容について、少し読んでみて、自分がどう感じるかを試してみるのも良いかもしれません。

 

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