今回は、「引き寄せの法則」ブームの火付け役となった本のレビュー記事でーす。
作者は儲けましたね。
いいなぁ。
「引き寄せの法則」を語るうえで避けては通れないのが、この本、『ザ・シークレット』です。
本書は、アメリカで2006年に出版され、邦訳版は2007年に出されています。
以後起こった「引き寄せの法則」ブームの火付け役となった作品で全世界で2500万部以上を売り上げたとのことです。
本書は、著者であるロンダ・バーンの主張の他にも、多くの過去の偉人だちの著作からの引用と、現代の作家、哲学者、医師、経営者などの言葉を織り交ぜて記されています。
なお、以下の引用については、特別に記してある以外、『ザ・シークレット』ロンダ・バーン、山川紘矢・山川亜希子・佐野美代子訳(角川書店、2007)からのものです。
もくじ
「明かされた秘密」の章について
初めの章は、『ザ・シークレット』という書名となっている、その「秘密」とは何かという点について書かれています。
そして、その秘密とは、「引き寄せの法則」のことです。
この「引き寄せの法則」というのは、「なんであれイメージされたものは現実となる」というルールを意味しています。
続いて、「法則は善悪についての判断をせず、肯定形か否定形かについても判断しない」ということが主張されています。
少し分かりづらいので、解説を加えておきましょう。
まず「善悪の判断をしない」という点についてですが、例えば、スーパーやコンビニのレジの行列で待っているとき、誰かが横入りしてきたとします。
そこで多くの人はきっと、「横入りするのは間違っている!」と考えることでしょう。
つまり、善悪についての判断をするということです。
けれども「引き寄せの法則」の考え方では、「相手が間違っている」ということを考え続けるのはオススメできないということになります。
なぜなら、その思いを長く抱いていると、考えていることが現実になって、他にも横入りする人が、また自分の目の前に現れてしまうことになるからです。
以上のことから、「◯◯はダメだ」という考え方をするのではなく、その反対の「××が良い」と考えるのが良いということになります。
これが、「法則は善悪を判断しない」ということの意味です。
要するに、「良いことでも悪いことでも、イメージしたものが現実になる」ということですね。
「肯定形か否定形かも判断しない」の部分についても、基本的な考え方は同じです。
例えば、寝坊してしまったときでも、学校や会社に「遅れたくない」と考えるのはNGです。
つまり、「遅れたくない」と考えると、「遅れる」ということについてイメージしているため、そのとおりの現実を引き寄せてしまうことになるわけです。
ですから結局のところ、「引き寄せの法則」というのは、「嫌なもの、避けたいものについて考えるのではなく、好きなもの、望ましいものについてイメージをしなさい」という教えだと言えます。
「病気知らずの体」ではなく「健康な体」について考え、「お金に困らない生活」ではなく「お金が十分にある暮らし」についてイメージしなさい、という話です。
ところで、本書ではしばしば「宇宙」という単語が使われています。
この「宇宙」という言葉の意味について、少し書いておきます。
先の章からの引用ですが、次のような説明がなされています。
真実の恩恵とは、あなたがそれを宇宙、至高の意識、神、無限の知性等どのような名前で呼ぼうと、見えない場からやってくるのです。P261
このように、現実を作り出し、それを人間にもたらす力のことを「宇宙」と呼んでいるようです。
それだけじゃないけどね。
とりあえず、いまのとこは、その点を確認しておけばオッケーです。
百年位前から普通に出版された本にも書かれていたことです。
「わかりやすい秘密」の章について
前の章では、「イメージしたものが現実となる」とされていました。
この章では、
- 実際に、どういうものをイメージすれば良いのか。
- イメージをする際には、何に気をつければ良いのか。
について、書かれています。
願望実現のためにイメージをするときには、「自分がどういう感情を抱いているか」に気をつけるべきだとされています。
例えば、頭では「お金持ちになりたい」と思っていても、そのことをイメージしたときにワクワクするようなプラスの感情がなければ、実現には近づけないということです。
逆に、「自分の気分が上がるようなイメージを探って、それを意識し続ければ、現実が変わる」ということが主張されています。
また、そのための具体的な方法として、「シークレット・シフター」という例が挙げられています。
それは次のようなものです。
まず、ノートなどに自分の気分を上げてくれるものをリストアップします。
例としては、美しい思い出、将来の夢、笑えた瞬間などが挙げられています。
そして、もし嫌なことがあったとしてもその不快なことに意識を向けるのをやめて、「シークレット・シフター」のリストにあるものに意識を集中することで、気分転換を図るわけです。
要するに、「自分が愛情を持っているものに、ひたすらに意識を向けなさい」ということが勧められているわけです。
逆に不快なものに目を向けると、そのことが頻繁に実現したり、より一層大きく育つことになるとも言われています。
防御本能のためかもしれませんが、人は往々にして、不快なものをイメージし続けるというループにはまってしまいます。
- 腹の立ったことを何度も思い返して、相手を心の中で責める。
- 他人がする間違いだと思うことを、何とかしてやめさせようとする。
- 病気から逃れようとして、かえってそのことばかり考えてしまう。
しかし、たとえ大きな困難や苦しみの中にいたとしても、そのときこそ、意識を集中するべき対象は「心地良いこと」「素晴らしいこと」「面白いこと」「楽しいこと」の方だということが言われているわけです。
ただね、プラスのイメージだけじゃなく、セットになってる感情も大事だって話です。
「「秘密」の使い方」の章について
この章では、「引き寄せの法則」の使い方について、三つの段階に分けて説明されています。
願望実現のための三つのステップは、
- 願う
- 信じる
- 受け取る
とされています。
順番に見ていきましょう。
創造のプロセスの第一段階は、「願う」です。
願望を持つということが、「引き寄せの法則」の第一段階です。
ただし、「繰り返し意識すること」と「明確に意識すること」という条件が付けられています。
次の第二段階は、「信じる」です。
しかし、「実現すると信じよう」と思っても、「とてもではないが、まったく信じられない」と感じることもあるでしょう。
そのような場合のために、「フリをする」という方法が示されています。
すでに願望が実現したかのように振る舞うということです。
また、信じるときに障害となるものに、「いったいどうしたら、そんなことが起こりえるのか?」「どんな風に願望が実現されるのか」という疑問があるのではないでしょうか。
それに対しては、「考える必要はない」とされています。
願望は誰しも持ってはいるだろうと思いますが、「どうやって実現すれば良いのか分からない」ということが多いのではないでしょうか。
そういう状態で、実現の方法に意識を向けると「無理だ」ということが強く意識されることになって、失望して、残念な気持ちになってしまいます。
感情をもって意識を集中させたものが実現するというのが、「引き寄せの法則」ですから、こうなると成功は見込めません。
そもそも未実現の願望というのは、いまの自分の立場やものの見方からは解決策・突破口が見えないから実現できていない訳です。
「通常はこういう風に実現するのだろう」という思い込みが、実現への道を見えなくさせているところもあるに違いありません。
そのため、まずは、「どう実現されるのかについては考えるな」として、思い込みを手放すということをさせているようです。
創造のプロセス、最後の第三段階は「受け取る」です。
「受け取る」と言われると、実現されたプレゼントをただもらえば良いのかと思ってしまうところがあります。
けれども、ここで言われているのは、「実現したときの気分、喜びに浸れ」という話です。
逆に言うなら、願望が実現したときの良い気分をイメージできないと「引き寄せの法則」による実現は望めない、ということになります。
また、実現へ向かっているときには、流れに乗っているようなスムーズな感じがすると説明されています。
人間の思考パターンとして、色々と苦労をして、それを乗り越えてやっと達成するというイメージを抱きがちですが、そうではないということなのでしょう。
以上が、願望を実現するための三つのステップです。
- 願う
- 信じる
- 受け取る
とされていますが、実際のところ、これらの表現は少し分かりづらいようです。
より具体的に書くとするならば、
- (願望を)明確にする
- (実現した)フリをする
- (実現したときの感動を)味わう
と言えます。
続いて、非常に気になる「願望が実現するまでの時間」についても触れられています。
つまり、「いつ夢が叶うのか」という話です。
「重要なのは、宇宙との同調であり、宇宙にとってはどんなことでも簡単だ」とされています。
要するに、「願望の規模の大小は関わりがなく、願望が実現したときの様子やそのときの喜びをリアルにイメージできるかどうかに掛かっている」ということのようです。
願望をイメージし続けることが重要とされていることから、その点についてのアドバイスも書かれています。
そこでは、「自分の一日を前もって創造する」ことが勧められています。
毎朝、どういう一日にしたいかを考えてみたり、待ち時間があるたびに、実現したい願望を思い出したりすることで継続的にイメージを作り、それを繰り返すことが勧められている訳です。
これは、ヒックス夫妻版の「引き寄せの法則」に出てくる「節目ごとの意図確認」と同じものと考えられます。
それって、アホやん。
言ってみれば、「自分の願望に対して、ノリノリになっちゃえよ」って感じですかね。
「強力なプロセス」の章について
この章では、「引き寄せの法則」を使うためのコツとして、「感謝」と「視覚化」についての話が書かれています。
まず触れられているのは、感謝することの重要性です。
これまでの章では、自分が望む状態についての考え方が書いてありましたが、ここでは現状に対する態度についてのアドバイスがなされています。
「引き寄せの法則」を実践するとき、つまり自分が望む状態を実現するためにもっとも効果が高いのが、感謝することだということのようです。
しかし、「いったい何に感謝をするのか」という疑問が湧いてくるかもしれません。
それに対しては、
ないものねだりをやめて、すでに自分が持っているもので感謝できるものに焦点を合わせて下さい。たとえばこの本を読むための目や、今着ている服だっていいのです。P127
という考えが示されています。
人間は、現状について、それを「当然のこと」とみなしてしまいがちです。
何であれ、すでに持っているものについては、注意を向けるのを忘れてしまうということです。
多くの人が、家族や仲間がいて食べるものや着るものがあることのありがたさを、意識せずに生活しています。
それを思い出すためには、例えば、次のようなことをやってみるのも良いでしょう。
つまり、家を失い、職を失い、友人や家族を失って、再びそれを取り戻すことをイメージしてみるのです。
そうすれば、色々なもののありがたみを思い出すのではないでしょうか。
感情が大事であるというポイントについては、本書の中で何度も強調されています。
そして、抱くべきポジティブな感情の中で最高のものが「感謝」である、ということが主張されていると考えられるわけです。
ちなみに、ここで感謝の効用・重要性について語られてはいますが、「楽しい」と感じたり、「素晴らしい」と感じたりすることに比べて、なぜそれが優れているかについては、残念ながら触れられていません。
この点について、少し考えてみます。
まずもって、何らかの願望を叶えたいと思っている人というのは、現状に対して不満を持っている場合がほとんどだと言えるでしょう。
けれども、現状への不満というマイナスの感情を抱えたままで、未来についてのプラスの感情をイメージしたとしても、相殺されてしまうところがあるように思えます。
そのため、「理想的な状態をイメージし、実現したフリをし、感動を味わえ」と言いつつ、同時に「現状には感謝をせよ」と言っているのだと考えられそうです。
さて、次に大切さが指摘されるのは、「視覚化」についてです。
「視覚化」は「ビジュアライゼーション」とも書かれていますが、「心の中でイメージとして思い描くこと」という意味であると説明されています。
たとえば、お金が欲しいのだとしても、ただ「お金が欲しいなぁ」と漫然と思うのではなく、「本当に大金が自分のものである状態」をイメージしろということだと思われます。
それは例えば、積み上げられた札束かもしれませんし、残高が巨額になっている銀行の通帳かもしれません。
望みを明確にし、叶えられた状態をイメージし、そのときの感情を味わうということになるのですが、その際に陥りがちなミスについても言及されています。
何かを望むときには「手に入ればいいな」「いつか手に入れるぞ」と考えがちです。
しかし、そうするとイメージしたとおりのもの、つまり「将来手に入れる」という状態が引き寄せられ、ずっと実現しないということになってしまうのです。
また、「どのようにもたらされるかは、意識しなくて良い」とされています。
何かを望むとき、「どうやれば願いは叶うのか」「一体どんな風に実現されるのか」という疑いは付きものだとさえ言えるでしょう。
しかし、自分で想像できる「願望実現への道」は、とても限定的なものである場合が多いのではないでしょうか。
つまり、本当は千通りものアプローチの仕方があるのに、自分で考えられる方法は数通りしかないというような話です。
そういう意味では、「引き寄せの法則」の考えは、「自分の考えられるやり方にこだわることは、視野を狭め、成功を阻むものにさえなる」というような考えを示唆しているように思えます。
以上のように「視覚化」が重要な訳ですが、そのための具体的な方法として、「ビジョン・ボード」というものが紹介されています。
コルクボードなどに、「夢に見ている車、腕時計、ソウルメイトなど達成したいものや引き寄せたいものの写真」を貼るというものです。
そして、いつも目にする場所にそれを置くとのことです。
ビジョン・ボードを作ること自体も楽しいかもしれませんし、つねに自分の気分を上げてくれるものに触れていられることにもなるわけです。
ただね、強く意識していないと忘れがちになってしまうというのもまた、事実だと思いマスね。
「お金の秘密」の章について
多くの人が求めているのがお金ですが、お金はどうすれば引き寄せられるのでしょうか。
基本的には、これまで主張されてきたことを、お金に対しても行いなさいという話になっています。
「引き寄せの法則」の使い方の三つの段階は、
- 願う
- 信じる
- 受け取る
というものでした。
そして、この記事では具体的な方法として、
- (願望を)明確にする
- (実現した)フリをする
- (実現したときの感動を)味わう
と説明しました。
第一段階の「(願望を)明確にする」ということについて、いくら欲しいのか、金額をハッキリさせるということになるでしょう。
けれども、第二段階の「(実現した)フリをする」については、その気になって、お金を使ってしまえば、あっという間に貧乏になってしまいます。
ですから、実際にお金を使うのではなく、例えば、ショッピングをして自由にお金を使う場面をイメージしたり、通帳に十分な貯金の残高がある情景を想像するようなことになるでしょう。
そして、第三段階の「(実現したときの感動を)味わう」として、贅沢にお金を使い良い気分になったとき感情や、十分な貯蓄があることに満足したりほっとしたりするような気持ちを味わう、という流れになります。
「なぜ多くの人がお金持ちになれないのか」についても記されています。
おそらく、多くの人が「お金は額に汗して一生懸命に働いて手にするもの」と捉えていることでしょう。
しかし、このようなイメージは、「努力しなければお金が得られない現実」を引き寄せる原因になるものと考えられます。
また、いわゆる金欠の状態になると、視野が狭まり、お金が足りないということばかり考えてしまいがちです。
けれども、それこそがより一層の、あるいはより長い、金欠状態を招き寄せることになってしまいます。
お金の話だけでなく、本書において何度も言われているのは、「いまハッピーな気持ちになれ」という話です。
何かを求めるということになると、とかく人は「いまを犧牲にして、将来の喜びに賭ける」という風に考えがちです。
しかし忘れてしまいがちな点ですが、現在の積み重ねが生活や人生を作るのですから、不満を抱え続けることは不幸につながる道とも言えるわけです。
また、とっておきの方法として、「人にお金を分け与えること」が示されています。
「人にあげるなんてとんでもない。自分がもらいたいくらいだ」と感じてしまう人もいるかもしれません。
しかし、たとえ少額でも、人に何かをおごったり募金をしてみたりしてみるのが良いとのことです。
理由としては、人にお金を与えれば、「自分は人に与えるだけのお金を持っている人間だ」と自分自身に言っていることになるからです。
このように、もし自分の望みが叶えられたら、その自分はどう振る舞うかを考えて、先取りしてそのとおりにするということは大事なコツのようです。
いっつも足りないからねぇ。
足りないこと、欠落、欠乏に意識を向けてイヤな気分を味わうと、それが現実になるってーのが「引き寄せの法則」だからネ。
「人間関係の秘密」の章について
人間関係に関する章です。
関係を望ましいものに変えるためには、現状を変える必要があることになります。
けれども、多くの人が現状に不満や愚痴を言って不快な気分を味わい、それによって変わることのない「不満な日常」を引き寄せてしまっています。
現実を変えるためには、それに沿った心の準備をする必要があるということです。
例えば、まだ見ぬパートナーと一緒に暮らしたいのなら、その人のためのイスやクローゼットのスペースを用意しなさいということが説明されています。
また、いまとは別の場所で理想的な同僚と働きたいと望んでいるなら、会員制のものはキャンセルし、引っ越しのために荷造りをし始めよ、ということになるわけです。
他にも、自分の魅力を上げるための方法についても書かれています。
我々は「謙譲の美徳」というものを、教え込まれて育っています。
しかし、それが行き過ぎて、自己犠牲に至ってしまってはいけないと説明されています。
自己犠牲は、「十分なものがないから、人に譲ろう」という意識に根ざすものです。
しかし、そのような発想は、不足や欠乏を引き寄せてしまう原因になってしまいます。
逆に自分の心を満たしてやれば、豊かさを引き寄せ、人にも与えることができるようになります。
そのためには、自分の長所を認めて、自分自身を愛することが重要だとされています。
そうすれば、新たな長所が引き寄せられることになるからです。
自分の価値を認めてそのように振る舞えば、周囲の人間も影響を受けて、望ましい人間関係ができるということなのでしょう。
「そんなことないよー」ってフォローするのは、正直、メンドイ。
実際、だいたいの人は自己評価が低い人を嫌っているんじゃないだろうかね。
自分を肯定するように相手に求めているという意味では、謙遜したり卑下している人と一緒ということだね。
「健康の秘密」の章について
お金についてもそうですが、健康というのも、多くの人が望んでいる大きなテーマであると言えるでしょう。
健康についても、やはりイメージしたものが現実化すると主張されています。
まずはじめに、「医療を無視し、「引き寄せの法則」だけですべての病気を治そうとすることは勧めない」と説明されています。
これは、「引き寄せの法則」によって現実を変えるには、ある程度の時間が必要なことからそう書いているのかもしれません。
あるいは、責任を問われることを避けているようにも思われます。
次に、「すべての病気の原因はストレスにある」という主張がなされています。
マイナス思考がストレスを生み、ストレスが病気を生むということです。
身体に現れる不具合は、「そちらには進むな」というメッセージとされており、その意味では、なくてはならないものと言えるでしょう。
ただ、イメージが病気や老化をもたらすのだとしたら、どうしたら対処したら良いのでしょうか。
答えは、これまで書かれてきたことと、やはり同じです。
つまりは良いイメージを持つということで、「自分は完璧だ」と考えることが勧められています。
ただし、すでに病気に罹ってしまっているような場合には、完璧さをイメージするのは難しいでしょう。
とは言え、たとえ病気の状態であったにしても、それ以外のほとんどの部分は、正常に、しかも完璧に機能しています。
まずはそのことに意識を集中し、正常な働きをしてくれていることに感謝するのが良いでしょう。
自分を完璧だと思えば老化も防げると説明されていますが、これは、いくらか疑問を感じさせる部分ではあります。
「年を取ったことを何度も意識すれば、より老けこんでいくものだ」という程度の内容ならば、まさにそうだろうとは思えます。
問題があるとついついそのことばかりを考えてしまう最たるものが、病気や体の不具合についてと言えると思います。
ですから良いイメージへ、意識的に思い切って変えていくのが必要だということになるわけです。
不快なイメージは悪いものを身体に入れるようなもので、つまりは、それ自体が「毒」だと主張されています。
「マイナスの感情を抱えすぎれば、ウツになってしまう」と思う人は多いことでしょう。
けれども、「否定的なものというのは、ちょっとしたイメージでも毒だ」というように、そこまで重大なことと捉えている人は少ないのではないでしょうか。
このことを逆に言うなら、いまこの瞬間からプラスの感情を抱くということは、それ自体が「薬」として心と体に働くということになると言えるわけです。
まるで、宗教だな。
だから、「ちょっと言いすぎじゃね?」という感じの主張も含まれていますね。
ニューソートについては、また別のところで説明しまーす。
「この世界の秘密」について
この章では、世の中のことに対して、多くの人が抱きがちな「悪いイメージ」と、そのことへの対処法について書かれています。
戦争反対、原発反対、増税反対と声高に叫べば叫ぶだけ、戦争、原発、増税を引き寄せることになるとされています。
「◯◯は嫌だ」というイメージを抱くと、「嫌だ」の部分は聞き入れられず、「◯◯」の方がそのまま現実になってしまうという話です。
望まない状況に遭遇すると、その望まないものに心を奪われがちです。
しかし、そんなときでも望まないものをではなく、その反対の望むものをこそイメージすべきだ、ということになります。
次に、もう一つのヒントとして、「すべて自分の身に起こることは、自分自身が引き寄せたことだ」という考えが示されています。
例えば、あなたの見た誰かがイジメられるようなことがあったとしても、そのことを引き寄せたのは当の本人だ、という意味合いです。
否定したいものに意識を集中させるとその実現に加担したことになるため、嫌だと感じるようなものは、そもそもできる限り触れること自体を避けるべきだ、という主張がなされています。
マスコミは、ショッキングでセンセーショナルなことを我々に知らせようとします。
現状では、その方が注目を集めやすいからです。
そのため、知らせてくることの多くは、痛ましい事故や人々の諍いの話です。
けれども、そのようなマスコミのあり方を非難しても仕方がない、というようにも説明されています。
「引き寄せの法則」の考え方に則るのならば、我々の側が、意識する対象を変えてやれば良いだけの話だということになるからです。
最後に、多くの人が陥りがちな、もう一つの誤った考え方についても書かれています。
多くの人が望みを諦めるのは、「望むものが十分になく、私には回ってこない」と思うからだと言えます。
この章では、望むものはとても豊かに、無限に用意されているということが示されています。
ただしそのことの理由については、「宇宙」自体が豊かであるからという曖昧で大雑把な説明しかなされていません。
「供給は無限」と言われても、「はい、そうですか」と言って喜ぶのは馬鹿げているようで、難しい感じがしてしまうのではないでしょうか。
ただし、「もしかしたら、すべての人が同じものを求めている訳ではないのだから、自分のためにも用意されたものがあるかもしれない」と考えることは、少しだけ心を明るくさせてくれるところがあるかもしれません。
また人間の心には、「実現は困難だ」と厳しい見積もりをすると自分を現実的だと考えることができるために、必要以上に悲観的にものを見てしまう傾向があるのかもしれません。
あまりに、そちらに傾くと、うまく行くものも行かなくなってしまうというのは、考えられることです。
なお、ここまでの章に関してはいくらか肯定的に書いてきましたが、本書は、この辺りから次第に書きぶりが、ただの信仰告白のようになっていきます。
つまり、「私は、そう信じています。そうだとしたら、なんと素晴らしいのでしょうか」というような話がたくさん出始めるということです。
「望むものは無限にある」というこの章での主張もまた、「思考が現実を作る」というある程度は成り立っている事実を極限まで拡大して、それを正しいと著者がただ勝手に信じているということを意味しているように思えます。
そんな話、シンジラレナイわぁ。
ただ、「オマイが思うよりも、色々な彼女候補がいるんだし、お金が稼げるような道筋も、うんとタクサンあるんだぜ」って、まぁ、そんな感じの話かな。
「あなたの秘密」の章について
この章は、かなり問題のある部分です。
問題というのは、量子力学などに言及したりなどして、いかにも科学的な解説を加えているようでありながら、ほとんど意味の分からない説明に終始しているためです。
欲しい物のことを考えるとそれと同じ周波数が人間から発せられ、欲しい物のエネルギーもその周波数で振動させ、それを引き寄せるので、現実化すると説明されています。
しかしこれでは、説明になっていません。
なぜあるものを欲しいと思うことで、それと同じ周波数になるのかが不明です。
また、なぜ周波数が一致すると引き寄せ合うのかについても、説明がありません。
「振動」や「波動」や「チャンネル」という言葉は、本人だけがいかにも説明がついたというつもりになっているような怪しげな話に、しばしば登場する単語です。
また、人間はエネルギーであり、それは変化するだけであり、どう使うかによって創造が可能であるから、人間は宇宙の創造主であって、潜在能力は無限だとされています。
確かに、たとえば本のページをめくるといったように、人間は身の回りの状況を変えることができます。
ですから、その意味においては、小さな創造主であるとは言えるでしょう。
けれども、それは「限定された意味での創造主」でしかありません。
にもかかわらず、「創造主だから、力は無限だ」とするのは、完全に論理の飛躍です。
なぜなら、無限な力を持つ創造主というのは、先ほど書いた「限定された意味での創造主」とは、まったく別のものだからです。
この章に書かれているのは単に、何でもできると思いたい、そう言いたいがゆえに、繋がらない理屈を振り回している、というような話にすぎません。
続いて、「存在するのは一つの宇宙の意識だけで、それはすべてのものの中にある」と主張されています。
これは、いわゆる「宇宙一元論」です。
ワトルズ版の「引き寄せの法則」にも登場した考え方で、「一つは万物、万物は一つ」(すべてのものは、ただ一つの物質からできており、形を変えただけ)というような考え方です。
本書の主張を、少し引用してみましょう。
存在するのは常に一つの宇宙の意識だけで、存在していない場所はありません。それは全てのものの中に存在しています。宇宙の意識は全ての知性であり、全ての英知であり、それは全て完璧であり、それは全てであり、同時に全ての場所に存在するものです。もし全てのものが一つの宇宙の意識であり、その全てが普遍的に存在しているのならば、あなたの中にも全てが存在しているということになります!(P257)
宇宙と意識と知性と英知とがすべて同じものとみなされ、ごたまぜの理屈が展開されています。
この一元論的な世界観というのは、もとを正せばニューソートの思想にその源泉を求めることができます。
ニューソートについては、コチラに関連図書のレビュー記事があります。
問題は他にもあり、引用した文を見れば分かるとおり、「もしすべて一つの宇宙意識であり、それが遍在するがならば」と、仮の話をしながら、結論だけを事実のように主張しています。
これは、ありがちなものですが、誤った話の展開の仕方です。
以降は、すべてのものが同じ一つのものであり、過去も未来さえも一つのものから生み出されるのだから、それを利用すれば何でも叶えられるというような説明が続いています。
なお、ここで述べられている宇宙一元論と親和性が高い説明として、超ひも理論があります。
これは物理学上の仮説で、素粒子がプランク長さくらいの非常に小さい超ひもからできている(素粒子は超ひもの特殊な状態)と考えるものです。
つまり、森羅万象は一つのものからできているということになり、著者はおそらくこのことを念頭に置き、量子力学について言及をしているものと思われます。
しかし現段階では、超ひも理論はあくまで仮説であり、その正しさを証明する実験や天文観測はありません。
ましてや、著者の主張しているような現象、「考えること、思念が超ひもの振動に影響を与える」というようなことは確認されてなどいないでしょう。
あるいは、もし超ひも理論とは関わりがないのであれば、それはそれできちんと説明をすべきだということになります。
要するに、この章で言われているのは、「私は、そうではないかと思った」というだけの話で、あたかも物理学による裏付けがあるかのように語られていますが、そうではないのです。
「引き寄せの法則」って、ただ「私は、そう信じています!」ってだけの話なの?
「人生の秘密」の章について
最後の章です。
これまでの内容を踏まえ、人生といかに対峙すべきかといったような内容が書かれています。
最初に、「何よりもまず、いまこの場所で幸せになれ」との主張がなされています。
いま現在の幸せを実現すれば、当たり前の話ですが、少なくともいまこの場所における幸福感は得られます。
単純ではありますが、これは、非常に多くの場合において忘れ去られている事実だと思われます。
逆に言うなら、「好きでもないことを我慢して続けながら、いつかそれが報いられるときがきたら、そのとき幸せになろう」とするような思考回路に、人は陥りがちだということです。
けれども、このような考え方では、多くの場面で、不幸であり続ける結果となってしまいます。
そのうえ、報われるときが必ずしも来るとは限りませんから、最後までずっと不幸だったということにもなりかねません。
もしかすると、いますぐ気持ち良くなることを目指すのなら、「お酒を飲みまくったり、ドラッグを使ったりすればよいのか」というような極端な意見も出てくるかもしれません。
しかし、そうした行動が、ただ快楽だけをもたらすと考えるのは、単純にすぎるでしょう。
過度の飲酒やドラッグの使用には、快楽に負けた自分に対するの嫌悪感が必ずあるものです。
誰しも、それらのものが体を痛めつけ脳を破壊する行為であることが、意識的か無意識的かの違いはあるにしても分かっているからです。
続いて、引き寄せの力を使うことで、ある到達点に至ることが示されています。
それは、「自らが力、完璧さ、知恵、知性、愛、喜びそのものであることを悟るようになる」ということです。
たしかに、心からそう思えたときの効用は少なくないと思われます。
しかし、たとえ本書を最後まで読んで十分に実践した人であっても、「自分は完璧な存在である」と考えられる人間がどれほどいるのかについては、かなり疑問です。
さて、なぜ結論とも言える最終章の内容が疑わしいかと言えば、それに先立つ前章の内容が疑わしいからに他なりません。
前章の内容も、この章の結論も、誇大妄想的な思い込みと言われても不思議ではないものと言わざるをえません。
著者の陶酔しきったかのような人間賛美の強い主張の裏側には、根拠の薄さが見て取れます。
つまり、陶酔感なしには支えられない脆弱さが、否定し難く含まれているということです。
当研究所では、「引き寄せの法則」をもっと現実的な作用として解釈することを目指しています。
乗り切れなかった人は、完全に置いてけぼりですワ。
解題
全体のまとめをする前に、本書の特徴を少し挙げておきます。
まず、書名である『ザ・シークレット』の「秘密」ですが、これは「引き寄せの法則」のことだと説明されています。
しかし、「引き寄せの法則」自体は、本書が出版される百年ほど前に、普通に出版された本にも書かれているようなものです。
つまりは、注目を集めるための演出として、「引き寄せの法則」を隠された「秘密」として描いたということになります。
また、全体としては、いま活躍している作家、学者、企業家などの言葉を散りばめ、なおかつ、過去の偉人もときより挿入しながら、「引き寄せの法則」の説明がなされています。
ただし、引用された歴史上の人物の言葉の中には、果たして本当に「引き寄せの法則」についての言葉だろうかと疑わく感じるものも含まれています。
逆に言うなら、そうした言葉を利用して、あたかも「引き寄せの法則」が永遠普遍の真理であるかのように書いているわけです。
さて、本書で重要な秘密とされている「引き寄せの法則」自体についてですが、これはいわゆるニューソート思想の焼き直しと見ることができます。
ニューソートについては、コチラに関連書籍のレビュー記事がありますが、基本的には「意識は宇宙と繋がっており、前向きな考え方が運命を切り開く」と捉えるような考え方を言います。
これは、本書で示された「引き寄せの法則」の基本思想そのものと言って良いでしょう。
ただし、ニューソートはキリスト教に源流を持つものであって、そのことから分かるように、「信仰」を前提としていています。
つまり、「私はそう信じている」という内容が根本にあるのであって、そこに同意できなければ、意味の分からない主張としか受け取れない部分が、かなり多く含まれています。
本書の大きな問題点も、そこにあります。
結局のところ、信じることができない人にとっては、「あなたはそう信じているのですね?それは良かった。私とは関係がない話ですけれどもね」ということになるわけです。
では、「引き寄せの法則」は、ただの信仰告白にすぎないものなのでしょうか。
必ずしも、そうとも言えないだろうと思います。
なぜなら、「引き寄せの法則」が勧めるようなポジティブな心のあり方が、願望実現のために大きな力となるのは、間違いのないところだとも言えるからです。
当研究所では、実際にポジティブな姿勢が働きかけている対象というのは、「宇宙」などではなく、そうした考えを持っている本人の「無意識」であると考えています。
これは特に目新しい意見ではありませんが、ニューソートにしても、「引き寄せの法則」にしても、知れば知るほど、無意識の効用についての話だというようにしか思えないというのが率直な感想です。
実際、「私は完璧な存在だ」と言うとき、その言葉を聞いているのは、「宇宙」などではなく、言った本人の「無意識」です。
もちろん「意識」もまた、その言葉を聞いています。
しかし、「意識」は分別によって、「私は完璧な存在だ、などというのは嘘だ」と捉えてしまいます。
ただしそのときには、「無意識」の側では、そのことについての刷り込みが行われる訳です。
ただし、そのためには一つの条件があります。
その条件というのは、期待や感謝などのような「ポジティブな気持ち」を抱いているということです。
気持ちの良さとセットになったイメージでなければ、刷り込みも深く行われず、またイメージの想起も繰り返されません。
そのため、本書でも「豊かな気持ちや愛情や喜びを十分に感じていなければ」(P137)ならないというような話が、何度も書かれているだと思われます。
無意識に対して、ポジティブな気持ちとともに目標が正しく設定されると、成功に至る方法の、まさに無意識的な探求が始まります。
何かを思い出そうとしているときや問題を解決しようとするとき、しばらくしてから、そのことを集中して考えていた訳でもないタイミングで、答えを思いつくことがあります。
つまり、「無意識」は問題を設定してやれば、答えを自動で探し続ける性質を持っているということです。
これと同じことが、自らが設定した目標(=願望)についても起きます。
つまり、
- 願う
- 信じる
- 受け取る
という三つのステップは、「無意識」へ問題設定を行うための手順なのです。
こうした「無意識」の働きを利用することこそが、「引き寄せの法則」にかぎらず、成功法則と呼ばれるものの多くが目論んでいるところです。
以上のことから、まずもっていかにポジティブな気持ちを持ちつつイメージを定着させるかという点が重要なポイントになります。
その意味では、何度か説明されているように、「成功のイメージを明確に持て」という教えには、注意が必要です。
そこには、少なくとも二つの落とし穴があるからです。
一つは、「十分に明確にイメージできないから、実現も無理だ」と感じて、テンションが下がってしまうことがあるという点です。
もう一つは、明確さを上げようとディティールにこだわって想像しているときに、成功全体のイメージが薄れ、ポジティブさが失われてしまうことがある点です。
これらの危険性があるため、ヒックス夫妻による「引き寄せの法則」においては、次のように説明されています。
欲求について考えるときには、前向きの感情がわき起こる限りで詳しく考えればいいが、ネガティブな感情になるほど詳細にわたってはいけない。(『引き寄せの法則 エイブラハムとの対話』エスター・ヒックス、ジェリー・ヒックス、吉田 利子訳(SBクリエイティブ)P298)
「引き寄せの法則」を使うために、感情が鍵となっており、だから、こういう細かい心情の動きを捉えることがとても大切です。
本書では、このようなデリケートな表現が欠けているため、著者であるロンダ・バーンは、それほど「引き寄せの法則」に通じていないようにも思えます。
率直に言って、本書は「色々な人から聞きかじった話を寄せ集めたもの」という雰囲気があります。
逆に言うなら、自分の中での消化が不十分な印象があるということです。
最終章に近づくにつれて、思い込みが幅を利かせ、何を言っているのかが分からなくなるのも、その辺りに原因があるのだと思われます。
とは言え、著者にとっての新しい思想に出会った驚きや喜びが素直に表現されているところは、良い点だと言えるでしょう。
また、実際には特に隠されていたわけではない「引き寄せの法則」の考え方を、あたかも特別な秘密の情報であるかのように演出したことは、かなりの高い効果を生み出しているようです。
これらのことが、世界的なベストセラーになった大きな理由と言えるかもしれません。
また、「引き寄せの法則」について、様々な人の考え方、捉え方が数多く掲載されているところもまた、本書の優れた点だと言えるでしょう。
なぜなら、自分が詳しく話を聞くべき相手を探す、大きな手がかりとなるからです。
「引き寄せの法則」については、様々な人が、色々な仕方で説明を加えています。
そして、自分にマッチした説明をしてくれる人を見つけることが、マスターのための近道になるものと思われます。
そのため、この本を読み、自分のフィーリングに合いそうな人を見つけて、その人の本を読むことで理解を深めていくような学び方をするのがおすすめの方法だと言えます。
この本の著者ロンダ・バーンの師匠も、彼らだと思いますし。
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