「引き寄せの法則」研究所

書評・レビュー:『ザ・シークレット』ロンダ・バーン、山川紘矢・山川亜希子・佐野美代子訳(角川書店)

「引き寄せの法則」を語るうえでは、避けては通れないのが、この本、『ザ・シークレット』です。

本書は、アメリカで2006年に出版され、邦訳版は2007年に出されています。

以後起こった「引き寄せの法則」ブームの火付け役となった作品で全世界で300万部以上を売り上げたとのことです。

本書は、著者であるロンダ・バーンの主張の他にも、多くの過去の偉人だちの著作からの引用と、現代の作家、哲学者、医師、経営者などの言葉を織り交ぜて記されています。

なお引用については、特別に記してある以外、『ザ・シークレット』ロンダ・バーン、山川紘矢・山川亜希子・佐野美代子訳(角川書店、2007)によっています。

 

「明かされた秘密」の章について

初めの章は、『ザ・シークレット』という書名となっている、その「秘密」とは何かという点について書かれています。

その秘密とは、「引き寄せの法則」のことです。

そして、それは「なんであれイメージされたものは現実となる」というルールを意味します。

法則は善悪についての判断をせず、肯定形か否定形かについても判断しないということが主張されています。

まず善悪についてですが、例えば、スーパーやコンビニのレジの行列で待っているとき、誰かが横入りしてきたとしましょう。

そこで、おそらくあなたは「横入りするのは間違っている!」と考えることでしょう。

つまり、善悪についての判断をするということです。

そのときには、自分は正義の側に立っている者だと感じられるかもしれません。

しかし「引き寄せの法則」によれば、その思いを頭の中で長い間抱いていると、思考が現実になって、他にもまた横入りする人が自分の目の前に現れてしまうことになります。

このことから、「◯◯はダメだ」という考え方をするのは適切ではなく、その反対の「××が良い」と考えるべきだと言える訳です。

否定型の表現についても、基本は同じです。

上記の例のように「遅れたくない」と考えると、「遅れる」ということについて考えているため、そのとおりの現実を引き寄せてしまうことになる訳です。

ですから結局のところ、「引き寄せの法則」というのは、「嫌なもの、避けたいものについて考えるのではなく、好きなもの、望ましいものについてイメージをすべし」という教えだと言えます。

「病気知らずの体」ではなく「健康な体」について考え、「お金に困らない生活」ではなく「お金が十分にある暮らし」についてイメージしなさい、という話です。

なお、本書ではしばしば「宇宙」という単語が使われています。

先の章からの引用ですが、

真実の恩恵とは、あなたがそれを宇宙、至高の意識、神、無限の知性等どのような名前で呼ぼうと、見えない場からやってくるのです。P261

とあるように、現実を作り出し、それを人間にもたらす力のことを「宇宙」と呼んでいるようです。

 

「わかりやすい秘密」の章について

前の章では、「イメージしたものが現実となる」とされていました。

この章では、

について、書かれています。

願望実現のためにイメージをするときには、「自分がどういう感情を抱いているか」に注視すべきだとされています。

例えば、頭では「お金持ちになりたい」と思っていても、そのことをイメージしたときにワクワクするようなプラスの感情がなければ、実現には近づけないということです。

逆に、「自分の気分が上がるようなイメージを探って、それを意識し続ければ、現実が変わる」というのが本書の主張です。

そのための具体的な方法として、「シークレット・シフター」という例が挙げられています。

まず、ノートなどに自分の気分を上げてくれるものをリストアップします。

そして、もし嫌なことがあったとしてもその不快なことに意識を向けるのをやめて、「シークレット・シフター」のリストにあるものに意識を集中することで、気分転換を図ることが勧められています。

つまり展開されているのは「自分が愛情を持っているものに、ひたすらに意識を向けよ」というメッセージです。

逆に不快なものに目を向けると、そのことが頻繁に実現したり、より一層大きく育つことになるとも言われています。

防御本能のためか、人は往々にして、不快なものをイメージし続けるというループにはまってしまいます。

しかし、たとえ大きな困難や苦しみの中にいたとしても、そのときこそ、意識を集中するべき対象は「心地良いこと」「素晴らしいこと」「面白いこと」「楽しいこと」の方だということが言われている訳です。

「「秘密」の使い方」の章について

この章では、「引き寄せの法則」の使い方について、三つの段階に分けて説明されています。

具体的には、

とされています。

順番に見ていきましょう。

創造のプロセスの第一段階は、「願う」です。

願望を持つということが、「引き寄せの法則」の第一段階です。

ただし、「繰り返し意識すること」と「明確に意識すること」という条件が付けられています。

次の第二段階は、「信じる」です。

しかし、「実現すると信じよう」と思っても、「とてもではないが、まったく信じられない」と感じることもあるでしょう。

そのような場合のために、「フリをする」という方法が示されています。

すでに願望が実現したかのように振る舞うということです。

また、信じるときに障害となるものに、「いったいどうしたらそんなことが起こりえるのか?」「どうやって願望が実現するのか」という疑問があるのではないでしょうか。

それに対しては、「考える必要はない」とされています。

願望は誰しも持ってはいるだろうと思いますが、「どうやって実現すれば良いのか分からない」ということが多いのではないでしょうか。

そういう状態で、実現の方法に意識を向けると「無理だ」ということが強く意識されることになって、失望して、残念な気持ちになってしまいます。

感情をもって意識を集中させたものが実現するというのが、「引き寄せの法則」ですから、こうなると成功は見込めません。

そもそも未実現の願望というのは、いまの自分の立場やものの見方からは解決策・突破口が見えないから実現できていない訳です。

「通常はこういう風に実現するのだろう」という思い込みが、実現への道を見えなくさせているところもあるに違いありません。

そのため、まずは、「どう実現されるのかについては考えるな」として、思い込みを手放すということをさせている部分があるように思えます。

創造のプロセス、最後の第三段階は「受け取る」です。

「受け取る」と言われると、ただ実現することを享受すれば良いのかと思ってしまうところがあります。

けれども、ここで言われているのは、「実現したときの気分、喜びに浸れ」という話です。

逆に言うなら、願望が実現したときの良い気分をイメージできないと「引き寄せの法則」による実現は望めない、ということになります。

また、実現へ向かっているときには、流れに乗っているようなスムーズな感じがすると説明されています。

人は往々にして、苦難を乗り越えての達成というイメージを抱きがちですが、そうではないということなのでしょう。

以上が、願望を実現するための三つのステップです。

とされていますが、実際のところ、これらの表現は少し分かりづらいようです。

より具体的に書くとするならば、

と言えるものと思います。

続いて、非常に気になる「願望が実現するまでの時間」についても触れられています。

つまり、「いつ夢が叶うのか」という話です。

「重要なのは、宇宙との同調であり、宇宙にとってはどんなことでも簡単だ」とされています。

要するに、「願望の規模の大小は関わりがなく、願望が実現したときの様子やそのときの喜びをリアルにイメージできるかどうかに掛かっている」ということのようです。

願望をイメージし続けることが重要とされていることから、その点についてのアドバイスも書かれています。

そこでは、「自分の一日を前もって創造する」ことが勧められています。

毎朝、どういう一日にしたいかを考えてみたり、待ち時間があるたびに、実現したい願望を思い出したりすることで継続的にイメージを作り、それを繰り返すことが勧められている訳です。

これは、ヒックス夫妻版の「引き寄せの法則」に出てくる「節目ごとの意図確認」と同じものと考えられます。

 

「強力なプロセス」の章について

この章では、「引き寄せの法則」を使うためのコツとして、「感謝」と「視覚化」についての話が書かれています。

まず触れられているのは、感謝することの重要性です。

これまでの章では、自分が望む状態についての考え方が書いてありましたが、ここでは現状に対する態度に関する助言がなされています。

「引き寄せの法則」を実践するとき、つまり自分が望む状態を実現するためにもっとも効果が高いのが、感謝することなのだそうです。

しかし、「いったい何に感謝をするのか」という疑問が湧いてくるかもしれません。

それに対しては、

ないものねだりをやめて、すでに自分が持っているもので感謝できるものに焦点を合わせて下さい。たとえばこの本を読むための目や、今着ている服だっていいのです。P127

という考えが示されています。

人間は、現状について、それを「当然のこと」とみなしてしまいがちです。

たとえば、家を失い、職を失い、友人や家族を失って、再びそれを取り戻すことをイメージしてみれば、そのありがたみが感じられるかもしれません。

感情が大事であるということは、本書では何度も強調されています。

抱くべきポジティブな感情の中で最高のものが「感謝」である、ということが言えるのかもしれません。

なお、感謝の効用・重要性については語られていますが、「楽しい」と感じたり、「素晴らしい」と感じたりすることに比べて、なぜそれが優れているかについては、残念ながら触れられていません。

このことについて、少し考えてみましょう。

まずもって、実際に現実を変えたいと思っている人というのは、現状に対して不満を持っている場合がほとんどでしょう。

しかし、現状への不満というマイナスの感情を抱えたままで、未来についてのプラスの感情をイメージしたとしても、相殺されてしまうところがあるように思えます。

ですから、「理想的な状態をイメージし、実現したフリをし、感動を味わえ」と言いつつ、同時に「現状には感謝をせよ」と言っているのだと考えられそうです。

「感謝」の次に重要性が指摘されるのは、「視覚化」についてです。

「視覚化」は「ビジュアライゼーション」とも書かれていますが、「心の中でイメージとして思い描くこと」という意味であると説明されています。

たとえば、お金が欲しいのだとしても、ただ「お金が欲しいなぁ」と漫然と思うのではなく、「本当に大金が自分のものである状態」をイメージしろということだと思われます。

それは例えば、積み上げられた札束かもしれませんし、残高が巨額になっている銀行の通帳かもしれません。

望みを明確にし、叶えられた状態をイメージし、そのときの感情を味わうということになるのですが、その際に陥りがちなミスについても言及されています。

何かを望むときには「手に入ればいいな」「いつか手に入れるぞ」と考えがちです。

しかし、そうするとイメージしたとおりのもの、つまり「将来手に入れる」という状態が引き寄せられ、ずっと実現しないということになってしまうのです。

また、「どのようにもたらされるかは、意識を向けなくて良い」とされています。

何かを望むとき、「どうしたら、そんなことが実現するのか」という疑いは付きものだとさえ言えるでしょう。

しかし、自分で想像できる「願望の実現へ至る道」は、非常に限られたものである場合が多い筈です。

たとえば、本当は千通りものアプローチの仕方があるのに、自分で考えられる方法は数通りしかないというような話です。

そういう意味では、「引き寄せの法則」の考えは、「自分の考えられるやり方にこだわることは、視野を狭め、成功を阻むものにさえなる」というような考えを示唆しているように思えます。

以上のように「視覚化」が重要な訳ですが、そのための具体的な方法として、「ビジョン・ボード」というものが紹介されています。

コルクボードなどに、「夢に見ている車、腕時計、ソウルメイトなど達成したいものや引き寄せたいものの写真」を貼るというものです。

そして、いつも目にする場所にそれを置くとのことです。

ビジョン・ボードを作ること自体も楽しいでしょうし、つねに自分の気分を上げてくれるものに触れていられることにもなります。

そのため、「今、ハッピーな気持ちになりなさい」とする本書の主張に沿った方法と言えるでしょう。

ビジョンボードを見たときにも、感謝をすることが重要です。

感謝の感情は、現状への不満というマイナスを消すためではないかと書きましたが、実現したい未来についても、先取りをして感謝しておくのが大事だということのようです。

「楽しさ」「喜び」という類の感情は一時的な場合が多いけれども、「感謝」というのは継続的なものであるため、繰り返しイメージすることが重要な「引き寄せの法則」では、非常に有効に働く、ということなのかもしれません。

 

「お金の秘密」の章について

多くの人が求めているのがお金ですが、お金はどうすれば引き寄せられるのでしょうか。

基本的には、これまで主張されてきたことを、お金に対しても行いなさいという話になっています。

「引き寄せの法則」の使い方の三つの段階は、

というものでした。

そして、この記事では具体的な方法として、

と説明しました。

第一段階の「(願望を)明確にする」ということについて、いくら欲しいのか、金額をハッキリさせるということになるでしょう。

しかし、第二段階の「(実現した)フリをする」については、その気になって、お金を使ってしまえば、あっという間に貧乏になってしまいます。

ですから、実際にお金を使うのではなく、例えば、ショッピングをして自由にお金を使う場面をイメージしたり、通帳に十分な貯金の残高がある情景を想像するようなことになるでしょう。

そして、第三段階の「(実現したときの感動を)味わう」として、贅沢にお金を使い良い気分になったとき感情や、十分な貯蓄があることに満足したりほっとしたりするような気持ちを味わう、という流れになります。

「なぜ多くの人がお金持ちになれないのか」についても記されています。

おそらく、多くの人が「お金は額に汗して一生懸命に働いて手にするもの」と捉えていることでしょう。

しかし、このようなイメージは、「努力しなければお金が得られない現実」を引き寄せる原因になるものと考えられます。

また、いわゆる金欠の状態になると、視野が狭まり、お金が足りないということばかり考えてしまいがちです。

けれども、それこそがより一層の、あるいはより長い、貧窮を招き寄せることになってしまいます。

お金の話だけでなく、本書において何度も言われているのは、「いまハッピーな気持ちになれ」という話です。

何かを求めるということになると、とかく人は「いまを犧牲にして、将来の喜びに賭ける」という風に考えがちです。

しかし、「引き寄せの法則」では、まずもって「いまこの場所でハッピーになりなさい」と繰り返し主張されています。

忘れてしまいがちな点ですが、現在の積み重ねが生活を、また人生を作るのですから、将来を見ているとはいっても不満を抱えて続けることは、不幸につながる道とも言える訳です。

他にも、とっておきの方法として、「人にお金を分け与えること」が示されています。

「人にあげるなんてとんでもない。自分がもらいたいくらいだ」と感じてしまう人もいるのではないでしょうか。

しかし、たとえ少額でも、人に何かをおごったり募金をしてみたりしてみるのが良いとのことです。

人にお金を与えれば、「自分は人に与えるだけのお金を持っている人間だ」ということが、感覚として自分に分かってくるからだと考えられます。

 

「人間関係の秘密」の章について

人間関係に関する章です。

関係を望ましいものに変えるためには、現状を変える必要があることになります。

しかし、多くの人が現状に不満を述べ、それによって変わることのない「不満な日常」を引き寄せてしまっています。

変わるためには、それに沿った、ちぐはぐさのない準備をする必要があるということです。

例えば、まだ見ぬパートナーと一緒に暮らしたいのなら、その人のためのイスやクローゼットのスペースを用意しなさいということになります。

また、いまとは別の場所で理想的な同僚と働きたいと望んでいるなら、会員制のものはキャンセルし、引っ越しのために荷造りをし始めよ、ということになるのです。

他にも、自分の魅力を上げるための方法についても書かれています。

我々は「謙譲の美徳」というものを、教え込まれて育っています。

しかし、それが行き過ぎて、自己犠牲に至ってしまってはいけないとされています。

自己犠牲は、「十分なものがないから、人に譲ろう」という意識に根ざすものです。

しかし、そのような発想は、不足や欠乏を引き寄せてしまう元凶です。

逆に自分を満たしてやることで、豊かさを引き寄せ、人にも与えることができるようになります。

そのためには、自分の長所を認めて、自分自身を愛するが重要だとされています。

そうすれば、新たな長所が引き寄せられることになります。

自分の価値を認めて、そのように扱えば、周囲の人間もそれに影響を受け、望ましい人間関係ができるということなのでしょう。

 

「健康の秘密」の章について

お金についてもそうですが、健康というのも、多くの人が望んでいる大きなテーマであると言えるでしょう。

健康についても、やはりイメージしたものが現実化すると主張されています。

「引き寄せの法則」によって現実を変えるには、ある程度の時間が必要なことからか、医療を無視し、「引き寄せの法則」単体ですべての病気を治そうとすることは勧められていません。

そして、すべての病気の原因をストレスに求める主張がなされています。

マイナス思考がストレスを生み、ストレスが病気を生むという内容です。

身体に現れる不具合は、「そちらには進むな」というメッセージとされており、その意味では、なくてはならないものと言えるでしょう。

しかし、イメージが病気や老化をもたらすのだとしたら、どうしたら良いのでしょうか。

答えは、これまで書かれてきたことと、やはり同じです。

つまりは良いイメージを持つというこで、「自分は完璧だ」と考えることが勧められています。

ただし、すでに病気に罹ってしまっているような場合には、完璧さをイメージするのは難しいことに違いありません。

とは言え、たとえ病気の状態であったにしても、それ以外のほとんどの部分は、正常に、しかも完璧に機能しています。

まずはそのことに意識を集中し、正常な働きをしてくれていることに対して感謝するのが良いでしょう。

完璧だと思えば老化も防げるとされており、老化を完全に否定する表現とも取れそうですが、これは、いくらか疑問を感じさせる部分ではあります。

年を取ったことを何度も意識すれば老けこんでいく、という程度の内容ならば、まさにそうだろうとは思えます。

問題があるとついついそのことばかりを考えてしまう最たるものが、病気や体の不具合についてと言えると思います。

ですから良いイメージへ、意識的に思い切って変えていくのが必要だということになる訳です。

不快なイメージは、悪いものを身体に入れるようなもので、つまりは、それ自体が「毒」だというように主張されています。

マイナスの感情を抱え過ぎればうつ状態に陥るだろうと思っている人は多いでしょう。

しかし、ちょっとしたイメージでも「毒」だというように、そこまで重大なことと捉えている人は少ないのではないでしょうか。

このことを逆に言うなら、いまこの瞬間からプラスの感情を抱くということは、それ自体が「薬」として心と体に働くということになります。

 

「この世界の秘密」について

この章では、世の中のことに対して、多くの人が抱きがちな「悪いイメージ」と、そのことへの対処法について書かれています。

戦争反対、原発反対、増税反対と声高に叫べば叫ぶだけ、戦争、原発、増税を引き寄せることになるとされています。

「◯◯は嫌だ」というイメージを抱くと、「嫌だ」の部分は聞き入れられず、「◯◯」の方がそのまま現実になってしまうという話です。

望まない状況に遭遇すると、その望まないものに心を奪われがちです。

しかし、そんなときでも望まないものをではなく、その反対の望むものをこそイメージすべきだ、ということになります。

次に、もう一つのヒントとして、「すべて自分の身に起こることは、自分自身が引き寄せたことだ」という考えが示されています。

例えば、あなたの見た誰かが虐げられているようなことがあったとしても、そのことを引き寄せたのは当の本人だ、という意味合いです。

否定したいものに意識を集中させるとその実現に加担したことになるため、そもそもできる限り触れること自体を避けるべきだ、という主張がなされています。

マスコミは、ショッキングでセンセーショナルなことを我々に知らせようとします。

現状では、その方が耳目を集めやすいからです。

そのため、知らせてくることの多くは、痛ましい事故や人々の諍いの話です。

しかし、そのようなマスコミのあり方を非難しても仕方がない、とされています。

「引き寄せの法則」の考え方に則るのならば、我々の側が、意識する対象を変えてやれば良いだけの話だということです。

最後に、多くの人が陥りがちな、もう一つの誤った考え方についても書かれています。

多くの人が望みを諦めるのには、「望むものが十分になく、私には回ってこない」と思うからだと言えます。

この章では、望むものは豊かに無限に用意されているということが示されています。

ただしそのことの理由については、「宇宙」は豊かであるからという曖昧で大雑把な説明しかなされていません。

「供給は無限」と言われても、「はい、そうですか」と言って喜ぶのは馬鹿げているようで、難しい感じがしてしまうのではないでしょうか。

ただし、「もしかしたら、すべての人が同じものを求めている訳ではないのだから、自分のためにも用意されたものがあるかもしれない」と考えることは、少しだけ心を明るくさせてくれるところがあるかもしれません。

また、もしかすると、我々の心の中には、「実現は困難だ」と厳しい見積もりをすると自分を現実的だと考えることができるということから、必要以上に悲観的にものを見てしまう心の傾向があるようにも思えます。

なお、ここまでの章に関してはいくらか肯定的に書いてきましたが、本書は、この辺りから次第に書きぶりが、ただの信仰告白のようになっていきます。

つまり、「私は、そう信じています、なんと素晴らしいのでしょうか」というような話がたくさん出始めるということです。

「望むものは無限にある」というここでの主張もまた、「思考が現実を作る」というある程度は成り立っている事実を極限まで拡大して、それを正しいと著者が勝手に信じているということを意味しているように思えます。

 

「あなたの秘密」の章について

この章は、かなり問題のある部分です。

問題というのは、量子力学などに言及したりなどして、いかにも科学的な解説を加えているようでありながら、ほとんど意味の分からない説明に終始しているためです。

欲しい物のことを考えるとそれと同じ周波数を自分自身が発信し、欲しい物のエネルギーもその周波数で振動させ、それを引き寄せるので、現実化すると説明されています。

しかしこれでは、説明になっていません。

なぜあるものを欲しいと思うことで、それと同じ周波数になるのかが不明です。

また、なぜ周波数が一致すると引き寄せ合うのかについても、説明がありません。

「振動」や「波動」や「チャンネル」という言葉は、本人だけがいかにも説明がついたというつもりになっている怪しげな話に、しばしば登場する単語です。

また、人間はエネルギーであり、それは変化するだけであり、どう使うかによって創造が可能であるから、人間は宇宙の創造主であって、潜在能力は無限だとされています。

確かに、たとえば本のページをめくるといったように、人間は身の回りの状況を変えることができます。

ですから、その意味においては、小さな創造主であるとは言えるでしょう。

しかし、それは「限定された意味での創造主」でしかありません。

にもかかわらず、「創造主だから、力は無限だ」とするのは、完全に論理の飛躍です。

なぜなら、無限な力を持つ創造主というのは、先の「限定された意味での創造主」とは別のものだからです。

単に、何でもできると思いたい、そう言いたいがゆえに、繋がらない理屈を振り回している、という状態にすぎません。

続いて、「存在するのは一つの宇宙の意識だけで、それはすべてのものの中にある」と主張されています。

これは、いわゆる「宇宙一元論」です。

ワトルズ版の「引き寄せの法則」にも登場した考え方で、「一つは万物、万物は一つ」(すべてのものは、ただ一つの物質からできており、形を変えただけ)というような考え方です。

本書の主張を、少し引用してみましょう。

存在するのは常に一つの宇宙の意識だけで、存在していない場所はありません。それは全てのものの中に存在しています。宇宙の意識は全ての知性であり、全ての英知であり、それは全て完璧であり、それは全てであり、同時に全ての場所に存在するものです。もし全てのものが一つの宇宙の意識であり、その全てが普遍的に存在しているのならば、あなたの中にも全てが存在しているということになります!(P257)

宇宙と意識と知性と英知とがすべて同じものとみなされ、ごたまぜの理屈が展開されています。

この一元論的な世界観というのは、もとを正せばニューソートの思想にその源泉を求めることができます。

ニューソートについては、コチラに関連図書のレビュー記事があります。

問題は他にもあり、「もしすべて一つの宇宙意識であり、それが遍在するがならば」と、仮の話をしながら、結論だけを事実のように主張するのは、ありがちな誤った話の展開の仕方です。

以降は、すべてのものが同じ一つのものであり、過去も未来さえも一つのものから生み出されるのだから、それを利用すれば何でも叶えられるというような説明が続いています。

なお、ここで述べられている宇宙一元論と親和性が高い説明として、超ひも理論があります。

これは物理学上の仮説で、素粒子がプランク長さくらいの非常に小さい超ひもからできている(素粒子は超ひもの特殊な状態)と考えるものです。

つまり、森羅万象は一つのものからできているということになり、著者はおそらくこのことを念頭に置き、量子力学について言及をしているものと思われます。

しかし現段階では、超ひも理論はあくまで仮説であり、その正しさを証明する実験や天文観測はありません。

ましてや、著者の主張しているような現象、「考えること、思念が超ひもの振動に影響を与える」というようなことは確認されてなどいないでしょう。

あるいは、超ひも理論とは関わりがないのであれば、それはそれできちんと説明をすべきだということになります。

要するに、この章で言われているのは、「私は、そうではないかと思った」というだけの話で、あたかも物理学による裏付けがあるかのように語られていますが、そうではないのです。

 

「人生の秘密」の章について

最後の章です。

これまでの内容を踏まえ、人生にいかに対峙すべきかといったような内容が書かれています。

最初に、「何よりもまず、いまこの場所で幸せになれ」との主張がなされています。

いま現在の幸せを実現すれば、当たり前の話ですが、少なくともいまこの場所における幸福感は得られます。

単純ではありますが、これは、非常に多くの場合において忘れ去られている事実だと思われます。

逆に言うなら、「好きでもないことを我慢して続けながら、いつかそれが報いられるときがきたら、そのとき幸せになろう」とするような思考回路に、人は往々にして陥ってしまうということです。

けれども、このような考え方では、多くの場面で、不幸であり続ける結果となってしまいます。

そのうえ、報われるときが必ずしも来るとは限りませんから、最後までずっと不幸だったということにもなりかねません。

しかしもしかすると、いますぐ気持ち良くなればよいのなら、「お酒を飲みまくったり、ドラッグを使ったりすればよいのか」というような極端な意見も出てくるかもしれません。

しかし、そうした行動が、ただ快楽だけをもたらすと考えるのは、単純にすぎるでしょう。

過度の飲酒やドラッグの使用には、快楽に負けた自分への嫌悪感が必ずあるものです。

誰しも、それらのものが体を痛めつけ脳を破壊する行為であることが、意識的か無意識的かの違いはあるにしても分かっているからです。

続いて、引き寄せの力を使うことで、ある到達点に至ることが示されています。

それは、「自らが力、完璧さ、知恵、知性、愛、喜びそのものであることを悟るようになる」ということです。

たしかに、心からそう思えたときの効用は少なくないものでしょう。

しかしたとえ本書を最後まで読み、十分に実践した人であっても、「自分は完璧な存在である」と考えられる人間がどれほどいるのかについては、甚だ疑問です。

なぜ、結論とも言える最終章の内容が疑わしいかと言えば、それに先立つ前章の内容が疑わしいからです。

前章の内容も、この章の結論も、誇大妄想的な思い込みと言われても不思議ではありません。

著者の陶酔しきったかのような人間賛美の強い主張の裏側には、根拠の薄さが見て取れます。

つまり、陶酔感なしには支えられない脆弱さが、否定し難く含まれているということです。

当研究所では、「引き寄せの法則」をもっと現実的な作用として解釈します。

しかし、そのことは必ずしも、「引き寄せの法則」の効能が小さいものであることを意味しません。

 

解題

「引き寄せの法則」は、いわゆるニューソート思想の「焼き直し」と見ることができます。

ニューソートについては、コチラに関連書籍のレビュー記事がありますが、基本的には「意識は宇宙と繋がっており、前向きな考え方が運命を切り開く」と捉えるような考え方を言います。

これは、本書で示された「引き寄せの法則」の基本思想そのものと言って良いでしょう。

しかし、ニューソートはキリスト教に源流を持つものであって、そのことから分かるように、「信仰」を前提としていています。

つまり、「私はそう信じている」という内容が根本にあるのであって、そこに同意できなければ、意味の分からない主張としか受け取れない部分が、拭い難く含まれています。

では、「引き寄せの法則」は、ただの信仰告白にすぎないものなのでしょうか。

必ずしも、そうとも言えないだろうと思います。

その点に入る前に、本書への批判を、もう少しだけ加えます。

まずもって言えることは、人間というのは、「自分は世の中のことが分かっている」と思いたいものだということです。

なぜなら、自意識を持っている、つまり自分で自分のことを意識しているので、「よく分からない世界の中に自分がいる」と思うと不安だからです。

そのために、何らかの斬新な考え方に触れたりすると、ややもすると「私は宇宙の法則を理解した」と早合点してしまう訳です。

本書の著者の姿は、そうした類のものと思われます。

ただしポジティブな心のあり方が、願望実現のために大きな力となるのは、間違いのないところです。

当研究所では、実際にポジティブな姿勢が働きかけている対象というのは、「宇宙」などではなく、そうした考えを持っている本人の「無意識」であると考えます。

これは特に目新しい意見ではありませんが、ニューソートにしても、「引き寄せの法則」にしても、無意識の効用についての話だというようにしか思われません。

「私は完璧な存在だ」と言うとき、その言葉を聞いているのは、「宇宙」ではなく、言った本人の「無意識」です。

もちろん「意識」もまた、その言葉を聞いています。

しかし、「意識」は分別によって、「私は完璧な存在だ、などという主張は嘘だ」と捉えてしまいます。

けれども「無意識」の側では、そのことについての刷り込みが行われる訳です。

ただし、そこには一つの条件があります。

その条件というのは、期待や感謝などのような「ポジティブな気持ち」を抱いているということです。

気持ちの良さとセットになったイメージでなければ、刷り込みも深く行われず、またイメージの想起も繰り返されません。

そのため、本書でも「豊かな気持ちや愛情や喜びを十分に感じていなければ」(P137)ならないというような話が、何度も書かれているのです。

無意識に対して、ポジティブな気持ちとともに目標が正しく設定されると、成功に至る方法の、まさに無意識的な探求が始まります。

何かを思い出そうとしているときや問題を解決しようとするとき、しばらくしてから、そのことを集中して考えていた訳でもないタイミングで、答えを思いつくことがあります。

つまり、「無意識」は問題を設定してやれば、答えを自動で探し続ける性質を持っているということです。

これと同じことが、自らが設定した目標(=願望)についても起きます。

つまり、

という三つのステップは、「無意識」へ問題設定を行うための手順なのです。

こうした「無意識」の働きを利用することこそが、「引き寄せの法則」にかぎらず、成功法則と呼ばれるものの多くが目論んでいる内容です。

以上のことから、まずもっていかにポジティブな気持ちを持ちつつイメージを定着させるかという点が重要になります。

その意味では、何度か説明されているように、「成功のイメージを明確に持て」という教えには、注意が必要です。

そこには、少なくとも二つの落とし穴があるからです。

一つは、「十分に明確にイメージできないから、実現も無理だ」と感じて、気分が落ちてしまうことがあるという点です。

もう一つは、明確さを上げようと、ディティールにこだわって想像しているときに、成功全体のイメージが薄れ、ポジティブさが失われてしまうことがある点です。

これらの危険性があるため、ヒックス夫妻による「引き寄せの法則」においては、次のように説明されています。

欲求について考えるときには、前向きの感情がわき起こる限りで詳しく考えればいいが、ネガティブな感情になるほど詳細にわたってはいけない。(『引き寄せの法則 エイブラハムとの対話』エスター・ヒックス、ジェリー・ヒックス、吉田 利子訳(SBクリエイティブ)P298)

「引き寄せの法則」を使うに当たっては、こうしたディティールが非常に重要です。

そういう意味では、著者であるロンダ・バーンは、それほど「引き寄せの法則」に通じていないように思えます。

率直に言うなら、本書は「色々な人から聞きかじった話を寄せ集めたもの」というイメージがしてしまう訳です。

最終章に近づくにつれて、思い込みが幅を利かせ、何を言っているのかが分からなくなるのも、その辺りに原因があるのだろうと思われます。

さて、否定的な話が多くなってしまいましたが、それでも、著者にとっての新しい思想に出会った驚きや喜びが素直に表現されているところは、良い点だとも言えるでしょう。

そうした思いが込められているところが、300万部を超えるベストセラーになった大きな理由と言えるかもしれません。

また、「引き寄せの法則」について、様々な人の考え方、捉え方が数多く掲載されているところは、本書の非常に優れた点です。

なぜなら、自分が詳しく話を聞くべき相手を探す手がかりになりうるからです。

この本を読み、自分のフィーリングに合いそうな人を見つけて、その人の本を読むことで理解を深めていくような学び方をすると良いのではないでしょうか。

 

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